双子山

 日に日に秋を感じる中、次の登山は富士山の寄生火山“双子山”に決定しました。登山と言っても、今回は高低差が少ないのでトレッキングになります。
 寄生火山とは、正式には側火山と呼ばれ、大きな火山の中腹や裾野に新たに噴火してできた小火山で、富士山には70以上もの寄生火山があります。その中で最も大きくて新しいのが“宝永山(2,693m)”、“双子山”はそのすぐそばにあり、その名の通り2つの山、“上双子山(1,929m)”と“下双子山(1,804m)”が連なっています。
 11月6日、3か月振りの登山とあってみんなワクワク、はやる気持ちを抑えて豊橋を出発しました。

 新東名の新富士インターを降り、裾野市の“水ヶ塚公園”で休憩。車を降りると、目の前にドーンと白い雪をかぶった“富士山”がそびえ、その下にパックリと大きな口を開けた“宝永山”、手前にはこんもりとした大小2つの“双子山”が控えていました。みんな一斉に「きれい! こんなに美しい富士山を見たのは初めて!」と大歓声。車窓から見えていた富士山とは全く違い、その大迫力に目が釘付けになりました。
 紫がかった赤茶色の山肌は、まるで一面にビロードを敷き詰めたような上品な色合いで、“宝永山”の噴火の跡が富士山の美しさをさらに際立たせていました。空はどこまでも青く、雲一つない絶好の登山日和に、みんな登る前から大興奮、胸を弾ませて登山口の“御殿場口新五合目駐車場”に向かいました。

 午前8時半、身支度を整え“下双子山”を目指して、いざ出発!  溶岩の砂礫に覆われた登山道は、一歩踏み出すたびにザクッと音がします。少しずつ傾斜が増し、一歩一歩踏みしめながらゆっくりと登っていきます。静かな山に、時折、自衛隊の東富士演習場から大砲や機関銃の音が響いてきました。
 出発から1時間15分、“下双子山”山頂に到着。360度の大絶景に、みんな感動の声。青空に映える白い富士の頂と、その直下に宝永山、すぐ目の前には“上双子山”がそびえています。遠くには山中湖が見え、箱根の山の地獄谷から白い煙が立ち上っていました。
 当初の計画では、今回は“下双子山”だけのつもりでしたが、あまりの絶景に急きょ、“上双子山”にも登ることにしました。
 “下双子山”の山頂を下り、次は“上双子山”の頂を目指します。上り坂は急で、予想外に砂礫が深く、踏ん張りがききません。1歩登ってはズルッと下がり、必死に登っていきます。汗だくで奮闘すること35分、やっと山頂に到着。爽やかな風がとても気持ちよく、汗を吹き飛ばしてくれました。
 ここからの眺めも大絶景、富士山と宝永山が間近に迫り、その迫力にみんな大感激。さっき登った“下双子山”の山頂や広大な東富士演習場、遠くに駿河湾も見え、あっという間に休憩時間が過ぎました。

 これまで見た中で1番、圧巻の富士山をしっかりと目に焼き付け、下山開始。今度はかかとにグッと力を込め、一歩一歩慎重に下っていきました。上双子山を下り終え、駐車場を目指します。山の斜面には黄金色に輝く草もみじが点在し、「おもしろい景色ね」と、自然を楽しみながらゆっくりと下っていきました。
 12時半、無事駐車場に到着。今回は、歩行タイムが2時間40分という短いトレッキングでしたが、大自然の造形美をたっぷりと満喫し、心も体もリフレッシュすることができました。

 私たちの登山歴もかれこれ12年、高い山から低い山まで数々の山に挑戦してきました。私たちが登山を始めたきっかけは、やはりスタッフの健康レベルを上げることでした。今でこそ全員が元気に登山を楽しんでいますが、登山を始める前は、病気はないものの、ひざ痛や腰痛 ・肩こりなど、どこかに悩みを抱えているスタッフが多くいました。それが登山を始めたことで、訓練のために裏山を歩いたり、ストレッチや筋トレを積極的にするようになり、それまで抱えていた体の不調が徐々に消えていきました。また、汗をかくことが少なかったスタッフも、今ではしっかりと汗をかくことの心地よさが分かるようになりました。
 登山を始めたことで、全員が以前よりずっと健康になり、運動の重要性を実感しています。そこで、登山の効用を少しご紹介したいと思います。

 “登山”と言うと、脚力だけが頼みのスポーツのように感じる方が多いかもしれませんが、そうではありません。登山は脚力だけでなく、腕や胸の筋肉も使う“全身運動”なのです。全身の筋力がアップすることで基礎代謝量が上がり、太りにくい体になったり、免疫力がアップします。また、血行が良くなることで肩こりや冷え性が改善され、疲れにくい体になります。
 さらに登山は、心にも大きな効果があります。大自然に触れることで、心に霊的エネルギーが充電され、ストレスが解消されるようになります。心がリフレッシュし、清々しい気持ちに満たされるようになります。私たちも登山の後はいつも、心が晴れやかになり、「また頑張ろう!」と新たな力が湧いてきます。

 一口に“運動”と言っても、ジョギングや水泳・サイクリング・テニス……さまざまなものがあります。健康ブームの中で多くの人が熱心に運動をしていますが、その運動が本当に適しているかどうかは、運動後の感じ方で分かります。運動をしたあと「心身の清々しさを感じる」「限度を超えた強い疲労感がない」「心が明るく前向きになり、体に活力が湧いてくる」「質の良い睡眠が得られ、朝の目覚めが良い」こうした感覚が得られるなら、その運動は効果があります。いくら“運動は体にいい”と言っても、やり方を間違えるとマイナスになってしまうこともあります。
 「ホリスティック健康学」では、健康を手にする条件として“4つの柱”「心・食・運動・休養」を挙げています。登山は運動だけでなく、心にも休養にもプラスとなる、まさに“最高の健康法”と言えます。

 私たちはこれからも登山で心身を鍛え、フレンドの仕事を通して縁のあった方々のために奉仕していきたいと思っています。 皆さんも、晴れた日には自然と触れ合えるハイキングやトレッキングに出かけてみてはいかがでしょうか。

宮路山・五井山

 今年の初登山は、「久しぶりに地元の山を歩いてみよう!」ということになり、豊橋市の隣、豊川市にある “宮路山(みやじさん361m)”から“五井山(ごいさん454.2m)”までのハイキングコースをたどることにしました。ここは低山ながら山頂から三河湾が一望できる山として、ファミリーに大人気のコースです。私たちも、近場の山を知っておきたいと、その日がくるのを心待ちにしていました。 

 1月27日、気温は低いけれど最高の登山日和。午前8時、すぐに歩き出せるように登山靴を履き、豊橋を出発しました。見慣れた街並みをワクワクしながら眺めていると次第に山道に入り、出発から45分ほどで“宮路山第一駐車場”に到着。心配していた山道の凍結もなく、ホッと胸をなで下ろしました。木立の中、車から降りるなりひんやりと冷たい空気が全身を突き抜け、身も心も一瞬で引き締まりました。
 駐車場には「三河湾国定公園・宮路山登山道入り口」と彫り込まれた立派な木の柱が建てられ、その奥に木の階段が続いています。先頭のスタッフの「20分ほど登れば“宮路山”の頂上に着くからね」との掛け声に、「今回の登山は、いつもよりずっと楽そうね」と、みんなの顔に笑みがこぼれました。
 8時55分、“宮路山”の山頂を目指して、元気に出発! よく整備された広い道をゆっくりと登り始めました。ファミリー向けの山とあって、「宮路山自然探索路」と書かれた標識がいくつもあり、それに沿って登っていきます。

 途中、“雨乞いまつり”で有名な“宮道天神社(みやみちてんじんじゃ)”に立ち寄りました。この神社の歴史は古く、7世紀後半の天武天皇の時代に遡ります。“雨乞いの神”を祭るようになったのは明治になってからのことで、毎年8月に“雨乞いまつり”が行われています。神社の前に置かれた水桶の水がカチンカチンに凍っていて、「やっぱり寒いわね」と気温の低さを実感。再び、木々に囲まれた登山道を登っていきます。

 9時15分、目の前が急に開け“宮路山”山頂に到着。眼下に穏やかな三河湾が広がり、「あ、海だ!」と歓声が上がりました。遥かに続く海岸線がくっきりと見え、青い空と海、遠くに真っ白い雲がもこもこと重なり合って浮かんでいます。下見したスタッフから「頂上の景色は最高よ!」と聞いていましたが、予想以上の眺めにみんな「気持ちいい」と、じっと海を見つめていました。
 すると、「あそこに“松明峠(たいまつとうげ)”が見えるわよ!」との声に、みんな目を凝らします。“松明峠”とは別名“東山”で、私たちがいつも登っている裏山のことです。見慣れた山を見つけて、子供のようにはしゃいでいました。

 山頂には、「宮路山聖跡」と彫られた大きな石碑があります。これは持統天皇 (天武天皇の皇后)が三河を訪れたことを記念して、1916年に建てられました。実は宮路山は、ただのファミリー向けの山というだけでなく、古くから万葉集・十六夜日記・更級日記など数多くの歌集や紀行文に「もみじ」の名所として登場しています。「もみじ」とは“ドウダンツツジ(コアブラツツジ)”のことで、今でも数千本が群生し、5月には北側斜面一帯に可憐な白い花をつけ、秋には見事な紅葉が見られます。また、渡り蝶と呼ばれる“アサギマダラ”が飛来することでも知られています。

 “宮路山”山頂まではちょっとした足慣らし、15分ほど休憩し、次はいよいよ “五井山”を目指します。“五井山”への縦走路は思っていたよりアップダウンが多いコースで、低山ながら登山気分を味わえます。時折、冷たい風が頬をさします。きれいに整備された道はとても歩きやすく、木々の間から差し込む光が心を和ませてくれました。

 宮路山を出発して約1時間15分、ようやく“五井山”山頂に到着しました。ここでも目の前に三河湾が広がっています。宮路山同様、視界を遮るものは何もありません。眼下には蒲郡の町並みと、蒲郡を象徴する竹島や大島小島が見えます。きらきらと輝く海にポツンポツンと大小の島々が浮かび、その絶景にみんな見とれていました。

 山頂は広く、木のベンチがいくつもあり、たくさんの人たちが休んでいました。その中に自分たちで軽食を作って楽しんでいる若者たちがいて、湯気を立てている料理がとてもおいしそうでした。それを見て「寒い日はやっぱり、温かい物がいいわね」と言いながら、私たちは持参したおにぎりを頬張りました。
 景色を眺めていると突然、「御嶽山が見えるわよ!」というスタッフの声。「どこどこ?」と探していると、遠くに雪を被った真っ白な“御嶽山”を発見! みんな大興奮でした。
 山頂からの眺めをたっぷりと堪能し、11時20分、下山開始。短い休憩をとりながら、来た道をひたすら戻りました。12時50分、無事駐車場に到着。晴天の日曜日とあって、大勢の家族連れやグループとすれ違い、“宮路山・五井山”の人気の高さがよくわかりました。 

 今年の初登山はたった半日でしたが、地元の自然を心ゆくまで満喫しました。近場にこんなにも楽しめるハイキングコースがあることを知り、今度は紅葉の季節にみんなで訪れてみたいと思いました。