健康の大原則

 5月8日、ようやく“新型コロナウイルス感染症”の位置づけが、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行されました。3年に及ぶ行政の関与から、個人の自主的な取り組みへと変わり、ホッとされている方が多いのではないでしょうか。

 そこで今回は、健康について再確認していただくために、私たちが提唱している“ホリスティック医学・ホリスティック健康学”から、「健康の大原則」について少し述べてみたいと思います。

 真のホリスティック医学が明らかにした「健康の大原則」は―「自然法則に一致した考え方・生き方をすれば自然界と調和し、健康を維持することができる」というものです。

 私たち人間の身体には、驚異的なシステムが備わっています。例えば、自律神経やホルモン・生体維持機能などの働きを見ると、人間は初めから健康であるように造られていることが分かります。これらのシステムが正常に働くことによって健康が保たれ、また病気になっても健康を取り戻すことができるようになります。

 こうしたシステムは、私たちの身体全体に流れている“生体エネルギー”によって働きます。人間の考え方・生き方が自然法則に一致していると、生体エネルギーの流れが正常になり、身体が自然界と調和し、システムが正常に働くことで健康が保たれます。反対に、人間の考え方・生き方が自然法則に反していると、生体エネルギーの流れが異常になり、身体が自然界と不調和状態になることでシステムの働きに異常をきたし、病気が発生するようになります。

 では、健康を維持することができる自然法則とは、どのようなものなのでしょうか。それには、2つの法則があります。「利他性の法則」と「霊優位の法則(霊主肉従の法則)」です。

 「利他性の法則」とは、自分のことより他人や全体を優先する法則です。これは、人間の身体内部はもちろんのこと、私たちを取り巻くすべての環境、自然界のあらゆる次元において貫かれている法則で、数ある自然法則の中で最も重要な法則です。

 「霊優位の法則」とは、霊的・精神的なものを物質的・肉体的なものより重要視し、それを優先して求める法則です。これは、霊的要素を持っている人間だけに適用される法則で、人間は霊優位の状態を保ってこそ、生体エネルギーが全身をめぐり、自然界と調和状態に置かれるようになります。

 このように人間は、「利他性の法則」と「霊優位の法則」という2つの自然法則に一致した考え方・生き方をすることで、健康を維持することができるようになるのです。

 健康になるための4つの健康条件(心・食・運動・休養)については、これまでも述べてきました。「心・食・運動・休養」を自然法則に一致させるには、「健全な心」「正しい食事」「適度な運動」「十分な休養」という条件を満たすことです。これらの条件を高めれば高めるほど自然界との調和が保たれ、よりハイレベルの健康を手にすることができるようになります。

 ここで大切なことは、4つの健康条件はどれ一つ欠かすことができませんが、その中で最も重要なのは「健全な心」を持つ、ということです。「心・食・運動・休養」は互いに影響を及ぼしあっていますが、「心」は他の条件のすべてに強い影響力を持っています。“心の健全さ”のないところでは、たとえ「食・運動・休養」が万全であっても、健康を手にすることはできません。

 「健全な心」とは、具体的に言うと「利己性を抑え、利他性が支配している心」「物欲・肉欲に流されるのではなく、霊的・精神的な喜びを優先する心」です。心がこうした状態にあるとき、生体エネルギーがスムーズに全身をめぐり、明るく前向きに歩むことができるようになります。他者に対して愛の思いを持つことができ、「人の役に立ちたい」という利他的な思いが湧いてくるようになります。

 一方「不健全な心」とは、「物欲・肉欲に支配された利己的・自己中心的な心」です。心がこうした状態になると、生体エネルギーが枯渇し、不安や怒り・孤独感・悲しみといったマイナスの感情が湧いてくるようになります。こうした心のストレスが、健康を維持するためのシステムの働きを弱め、病気が発生するようになるのです。

 では、「健全な心」を持つにはどうすればよいのでしょうか。実はこれが一番難しく、まずは物欲・肉欲に支配された利己的・自己中心的な考え方・生き方の間違いに気づくことです。次に、そうした心に流されないように自己コントロールする力を身につけることです。そうした日々の努力によって「健全な心」が持てるようになります。

 さらに、人生の目的や生きがいを持つことも重要です。もちろん自然法則に一致した目的でなければなりませんが、それを持つことで生きる希望や喜びが湧いてくるようになります。テレビなどでよく元気な高齢者が紹介されますが、その多くが“人のために”との思いで、生き生きと活動しています。健康を手にするためには、「利他性の法則」に一致した人生の目的や生きがいが欠かせないのです。

 健康フレンドのスタッフは全員、「一人でも多くの方の役に立ちたい!」と思って活動しています。そして皆さんとの心の絆は、私たちにとって大きな喜びとなっています。

 皆さんは、人生の目的や生きがいを持っていらっしゃるでしょうか。皆さんが、自然法則に一致した生活を送る中でハイレベルの健康を手にし、喜びに満ちた人生を歩んでいかれることを心から願っています。

スマホ脳

 皆さんは『スマホ脳』という本をご存知でしょうか。著者はスウェーデンの精神科医“アンディッシュ・ハンセン”です。前作の『一流の脳』は世界的にベストセラーとなり、この本も日本を含む13か国で翻訳されています。『スマホ脳』には、ここ10年で人々の生活が一気にデジタル化したことによる心身への影響とその理由、そして対策が書かれています。

 私たちもこれまで、スマホ依存・ネット依存の恐ろしさを何度も述べ、人々に注意を促してきました。今回はこの本から、スマホが人間の脳と心に与える影響力について少しご紹介したいと思います。

 皆さんは、1日に何回、スマホを手にされるでしょうか? 朝起きてまずスマホをチェック、夜寝るときは目覚まし代わりにし、手の届く所に置いているという人が多いのではないでしょうか。

 ハンセン氏によると、現代人は1日に2600回以上、平均して10分に1度はスマホを手に取っているそうです。さらに、3人に1人は、夜中にも1回以上はチェックし、4割の人は、1日中スマホがないよりは声が出なくなる方がましだと思っている、というのです。これはスウェーデンの統計ですが、日本でも同じようなことが言えるのではないでしょうか。

 ハンセン氏は、スマホの存在が人間の“脳”に大きく悪影響を及ぼしていると述べています。多くの研究から―「スマホが手元にあるだけで、またマナーモードにしてポケットにいれておくだけでも集中力が奪われ、記憶力や認知能力が低下する」という結果が示されています。スマホを持っていると、ついチェックしたい衝動にかられ、集中力が奪われてしまいます。身に覚えのある方も多いのではないでしょうか。スマホの存在が、人間の“脳”を弱らせているのです。

 最近、幼い子供たちに対するタブレットを使った学習が注目されています。スウェーデンでは、1歳未満の乳児の4人に1人がインターネットを使い、2歳児は半数以上、7歳児ではほとんどの子供が毎日利用している、というから驚きです。

 多くの人は、タブレット学習は効果があると考えていますが、長年、子供の脳の発達を研究しているある教授によると、小さい子供の場合は、むしろ発達が遅れる可能性があるということです。また、就学前の子供を対象にした研究では、紙とペンを使って書くという運動能力が、文字を読む能力とも深く関わっていることが示されています。さらに小学校の高学年生を対象とした調査でも、紙の書籍の方がタブレット端末での書籍より、本の内容をよく覚えていたという結果が出ています。

 私たちも子供の脳の発達には、鉛筆とノートを使った学習と、紙の本を読むことが欠かせないと考えています。文部科学省は新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、小中学生などにタブレットを配る計画を加速させていますが、長い目で見ると悪影響があるのではないかと思っています。

 スマホは脳だけでなく、心にも大きな影響を及ぼします。驚いたことにスウェーデンでは、10~17歳で精神科医にかかったり、向精神薬をもらったりしたことがある若者の割合が、この10年で2倍になったとのこと。米国でもうつ病と診断された10代の若者が7年で6割も増え、日本でも急増しています。

 ハンセン氏は、その要因としてフェイスブックやツイッターなどのSNSを挙げています。賢く利用している人は問題ありませんが、多くの人がSNSを見ることで精神状態を悪化させています。それは特に女子に多く、フェイスブックやツイッターを見る時間が長いほど自分に自信が持てなくなり、不安や孤独を感じるようになるといいます。

 また複数の研究から、子供や若者が1日2時間を超えてスマホに夢中になっていると、うつ病のリスクが高まることが明らかになっています。スマホに関わる時間が長くなればなるほど睡眠や運動の時間が奪われ、うつ病になるリスクが高まるとのこと。子供だけでなく大人たちも、スマホによって大切な時間と健康が奪われているのです。

 ハンセン氏は、デジタルを駆使した先端のテクノロジーには、一長一短があることを覚えておかなければいけないと述べています。人間がテクノロジーに順応するのではなく、テクノロジーが私たちに順応すべきであると言っています。私たちも、道具は人間の心や生活を豊かにするためのものであって、人間が道具に使われてはいけないと思っています。スマホに依存し、大切な心の成長が妨げられてしまうのなら、スマホを持つべきではないと考えています。

 先日、新型コロナウイルスの感染者が世界全体で1億人を超えたという報道が流れました。多くの人がコロナ禍で外出できず、スマホ依存・ネット依存が加速したものと思います。私たちは、コロナウイルスの感染よりも “スマホ依存”の方が深刻な問題だと考えています。コロナの害は目に見えますが、スマホの害は目に見えない形で世界中に広がっていきます。目に見えないために、大半の人が危機感を感じていません。しかしスマホ依存は、人間の心や脳に悪影響を及ぼし、精神の病を引き起こします。それは単に肉体の病であるコロナ以上に、深刻な問題なのです。

 今、多くの研究によってスマホの危険性が明らかになってきていますが、現実はスマホの使用は拡大しています。私たちは、多くの人々がスマホによる精神疾患に苦しむという“最悪の事態”にまで至らないかぎり、人類は今の状況を変えることはできないだろうと思っています。

 『スマホ脳』の中には、IT企業のトップのエピソードが載っています。アップル社の創業者のスティーブ・ジョブズ氏は、自分の子供にはアイパッドの使用を厳しく制限していました。ビル・ゲイツ氏も、子供が14歳になるまでスマホを持たせませんでした。また、大流行している「いいね」の機能を開発したフェイスブックの関係者は、「自分たちがその機能を開発したことを後悔している」と述べています。

 私たちは、この本を多くの方に読んでいただきたいと思っています。