医者という病 ②

 前回は、和田秀樹氏の著書『医者という病』の中から、医療界に歴然とはびこっている闇の内容や、長年高齢者医療の現場に携わってきた和田氏の考えを少しご紹介しました。今回はその第2弾として、私たちも常々感じている薬と検査の問題について、少し述べてみたいと思います。

 皆さんは、高齢者がたくさんの薬を服用していることをご存じでしょうか。日本の高齢者の服薬に関する調査(2017年)によると、65歳以上の高齢者の約4人に1人が5種類以上の薬を飲んでいるといいます。和田氏は、そうした大量の薬が高齢者にとって有害になっていることを述べています。

 皆さんも知っているように、薬は子供か成人かによって処方される量が決められます。つまり、成人であれば180㎝90㎏の20代男性も、140㎝40㎏の90代女性も同じ量の薬が処方されることになります。ところが年を取れば、体力も内臓の機能も衰えるため、薬を分解する時間が長くかかります。多くの薬を飲めば飲むほど、それだけ体に蓄積することになってしまうのです。和田氏は、そうした過剰な薬の服用が意識障害や内臓の機能障害、寝たきりや認知症などの病気を引き起こす原因にもなっていることを指摘しています。そして読者に向けて、今一度、“ 薬を飲む害 ” について考えてほしいと訴えています。

 驚いたのは、最近よく耳にする高齢ドライバーによる暴走事故についての見解です。世間では、その原因が高齢による運転能力の低下だと言われていますが、和田氏は、大量の服薬による意識障害によって引き起こされていることを述べています。高齢者を専門に診てきた医師ならではの見解に、私たちもなるほどと思いました。

 健康診断をすると真っ先に気になるのが、数値が正常値内に入っているかどうか、ということではないでしょうか。多くの人は、数値が正常値内なら健康であると考えていますが、現実はそうではありません。和田氏は、健診時の正常値とは、その多くが成人世代の平均値にすぎず、日本人の平均範囲に入っているかどうかを調べるものにすぎないと言います。しかも高齢者は、その調査対象から外されているとのこと。問題は、医者が正常値にこだわりすぎているため、正常値に戻すことが治療だと思い込み、投薬をすることです。それがかえって患者を不健康にしてしまうのだと述べています。

 例えば、多くの人が気にしているコレステロール値がそうです。悪玉コレステロール値が高いと動脈硬化が進むとし、躍起になって数値を下げようとします。ところが近年、悪玉コレステロールは細胞膜や免疫細胞を元気にする働きがあることが分かり、和田氏は投薬の必要性を疑問視しています。

 また、血圧もそうです。一般的に血圧が140/90mmHg以上の場合は高血圧と診断されますが、年を取れば当然、血管の壁が厚くなり、血圧を上げて血流を良くしようとします。以前は、年齢プラス90~100が高血圧の基準でした。例えば、60歳の人なら150~160以下なら正常血圧とみなされていました。私たちも、それが理に適っていると考えています。血圧が少し高いと言って大げさに騒ぎ、薬で正常値まで下げる必要などないと思っています。

 和田氏は、血圧の高い人が薬をやめたらどうなるのか、逆に薬を飲み続けた人はどうなっているのかを、きちんと大規模調査をすることの必要性を訴えています。

 健康診断と言うと、日本では当たり前のように思われていますが、世界的に見ると珍しいようです。フィンランドで行われた大規模な調査研究で、集団検診は結果的に患者の寿命をそれほど延ばさないことが明らかになり、欧米ではすでに廃止になっているとのこと。集団検診が義務化されているのは日本と韓国くらいと言うのですから、驚きです。OECD(経済協力開発機構)も日本の集団検診には見直しを求めていて、和田氏はこの事実をもっと多くの日本人は知るべきであると述べています。

 和田氏は、薬よりも “ 食 ” の大切さを述べ、特に高齢者にはもっとタンパク質を摂ることを勧めています(*和田氏は肉食を勧めていますが、私たちは植物性タンパク質の摂取を勧めています)。私たちも健康に食事は欠かせないと思っていますが、それ以上に “ 心 ” のあり方が重要であり、“ 食 ” だけでなく “ 運動 ” と “ 休養 ” も欠かせません。つまり健康になるためには、医者や薬に頼るのではなく、“4つの柱 ”を正しく実践すること――「心・食・運動・休養」を自然法則に一致させるように努力することが大切であると考えています。「健全な心」「正しい食事」「適度な運動」「十分な休養」という4つの条件を高めれば高めるほど、よりハイレベルの健康を手にすることができるようになります。和田氏の『医者という病』を読んで、改めてその重要性を確認しました。

 健康フレンドのスタッフは全員がシニア世代ですが、薬を常用している人は一人もいません。皆さんも、医者や薬に頼る前に “4つの柱 ” を実践してみてください。皆さんが、自然法則に一致した生活を送る中で、ハイレベルの健康と真の幸福を手にされることを心から願っています。

医者という病 ①

 皆さんは、“和田秀樹”氏をご存じでしょうか。現在63歳で、精神科医として老年精神医学を専門とし、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっています。また、教育・医療・経済などの評論家でもあり、これまで数多くの著書を出しています。他にも大学や塾の講師、映画監督といった異色の経歴まで持っています。

 その彼が、昨年著した『医者という病』の中で、医者や大学病院・製薬会社など、医療界にはびこっているさまざまな闇を赤裸々に暴いています。今回は、この本を少しご紹介したいと思います。

 皆さんは、山崎豊子原作の『白い巨塔』(1965年発行)を読まれたことがあるでしょうか。大学病院に勤務する二人の医師を通して、医局制度の問題や医学界の腐敗を鋭く追及した小説です。映画やドラマ化されたので、一度はご覧になったことがあるのではないかと思います。和田氏の『医者という病』には、この『白い巨塔』を彷彿とさせる内容が随所に載っています。

 和田氏は、医学部には強力なヒエラルキーがあり、そのトップに立つ教授がとてつもなく強い権力を持ち、この構図をめぐる利権が医療業界に闇をつくり出していることを述べています。例えば、教授たちにとって都合の悪い研究や新しい研究は、それが患者にとってプラスであっても認められないと言います。声を上げたくても、医療界では自分より立場が上の医者には絶対に逆らえない状況にあるとのこと。また、大学医学部の入試には必ず面接があり、面接官はもちろん教授で、教授の意にそう素直で従順な者が合格するようになっているとも述べています。まさに『白い巨塔』の世界が、いまだに歴然と存在しているようです。

 私たちも、医療界にそうした権力と利権が絡む闇があることは知っていましたが、それが日本の医療の進歩を遅らせているという現実に、唖然としました。そして、そうした闇の中で葛藤しながら必死に患者の病と向き合っている医師たちに、心からの感謝とエールを送りたいと思いました。

 大学病院と言えば、多くの人は優秀な医師がいて、常に最先端の医療が受けられ、どこよりも安心だと思っていますが、実際はそうとは言えないようです。和田氏によると、大学病院では教育や研究が重視されるため、臨床は得意ではなく、日本の大学病院は世界的に見ても、二流、三流の医療しか提供していないのだとか。特に複数の病気を持つ高齢者には、大学病院へ行くことは危険だと、はっきり言っています。これには、驚いた方も多いのではないでしょうか。

 大学病院では、それぞれの科に分かれて診療が行われているため、一つの病気ならいいですが、複数の病気を持つ高齢者の場合、どうしてもたくさんの薬が処方されることになってしまいます。そのため和田氏は、専門医ではなく、患者の体を総合的に診察することができる“総合診療”を勧めています。とは言え、今の日本の大学医学部には、総合診療を教えられる医師がほとんどいないのが現状だそうです。

 もう一つ和田氏が勧めているのが、地元で評判の良い“町医者”をかかりつけ医にすることです。その際、患者の話や要望をしっかりと聞いてくれる医者であるかがポイントです。和田氏は、医者の言うことは必ずしも正しいわけではないことを強調し、自分の価値観で治療法を選ぶという意識を持つことの大切さを述べています。さらに「自分の幸せとはどのようなものか、どのような人生を送りたいのか、万が一の場合はどうしたいのかを考え、もしもの時にはどういう対応にしてほしいのか、どんな環境で最期を迎えたいのかをしっかりと考えておいてほしい」とも述べています。そして最後に、読者に向けて「医者という病」に侵されず、楽しく、豊かで、健やかな人生を送ってほしいと示しています。

 私たちも、医者の言うことがすべて正しいとは考えていません。それは、医療界の構造もそうですが、現代西洋医学自体が未熟な段階にあると考えているからです。和田氏も述べているように、自分はどんな人生を歩んでいきたいのかをしっかりと考え、悔いのない人生を送るためにも、治療法などを自ら選んでいくことが大切であると思っています。皆さんは、どのように考えていらっしゃるでしょうか。

 次回は『医者という病』の第2弾として、和田氏が指摘している薬と検査の問題について少しご紹介したいと思います。

 年明け早々、能登半島で大きな地震が起こり、甚大な被害をもたらしました。震災から1か月以上が経ちますが、いまだ多くの人々が厳しい避難生活を強いられています。被害に遭われた方々の心痛とご苦労を思うと、本当に胸が痛みます。被災された方々が、一日も早く安定した生活を取り戻すことができますよう、また寒さと疲労で体調を崩すことがありませんよう、スタッフ一同、心よりお祈り申し上げます。