宮路山・五井山

 今年の初登山は、「久しぶりに地元の山を歩いてみよう!」ということになり、豊橋市の隣、豊川市にある “宮路山(みやじさん361m)”から“五井山(ごいさん454.2m)”までのハイキングコースをたどることにしました。ここは低山ながら山頂から三河湾が一望できる山として、ファミリーに大人気のコースです。私たちも、近場の山を知っておきたいと、その日がくるのを心待ちにしていました。 

 1月27日、気温は低いけれど最高の登山日和。午前8時、すぐに歩き出せるように登山靴を履き、豊橋を出発しました。見慣れた街並みをワクワクしながら眺めていると次第に山道に入り、出発から45分ほどで“宮路山第一駐車場”に到着。心配していた山道の凍結もなく、ホッと胸をなで下ろしました。木立の中、車から降りるなりひんやりと冷たい空気が全身を突き抜け、身も心も一瞬で引き締まりました。
 駐車場には「三河湾国定公園・宮路山登山道入り口」と彫り込まれた立派な木の柱が建てられ、その奥に木の階段が続いています。先頭のスタッフの「20分ほど登れば“宮路山”の頂上に着くからね」との掛け声に、「今回の登山は、いつもよりずっと楽そうね」と、みんなの顔に笑みがこぼれました。
 8時55分、“宮路山”の山頂を目指して、元気に出発! よく整備された広い道をゆっくりと登り始めました。ファミリー向けの山とあって、「宮路山自然探索路」と書かれた標識がいくつもあり、それに沿って登っていきます。

 途中、“雨乞いまつり”で有名な“宮道天神社(みやみちてんじんじゃ)”に立ち寄りました。この神社の歴史は古く、7世紀後半の天武天皇の時代に遡ります。“雨乞いの神”を祭るようになったのは明治になってからのことで、毎年8月に“雨乞いまつり”が行われています。神社の前に置かれた水桶の水がカチンカチンに凍っていて、「やっぱり寒いわね」と気温の低さを実感。再び、木々に囲まれた登山道を登っていきます。

 9時15分、目の前が急に開け“宮路山”山頂に到着。眼下に穏やかな三河湾が広がり、「あ、海だ!」と歓声が上がりました。遥かに続く海岸線がくっきりと見え、青い空と海、遠くに真っ白い雲がもこもこと重なり合って浮かんでいます。下見したスタッフから「頂上の景色は最高よ!」と聞いていましたが、予想以上の眺めにみんな「気持ちいい」と、じっと海を見つめていました。
 すると、「あそこに“松明峠(たいまつとうげ)”が見えるわよ!」との声に、みんな目を凝らします。“松明峠”とは別名“東山”で、私たちがいつも登っている裏山のことです。見慣れた山を見つけて、子供のようにはしゃいでいました。

 山頂には、「宮路山聖跡」と彫られた大きな石碑があります。これは持統天皇 (天武天皇の皇后)が三河を訪れたことを記念して、1916年に建てられました。実は宮路山は、ただのファミリー向けの山というだけでなく、古くから万葉集・十六夜日記・更級日記など数多くの歌集や紀行文に「もみじ」の名所として登場しています。「もみじ」とは“ドウダンツツジ(コアブラツツジ)”のことで、今でも数千本が群生し、5月には北側斜面一帯に可憐な白い花をつけ、秋には見事な紅葉が見られます。また、渡り蝶と呼ばれる“アサギマダラ”が飛来することでも知られています。

 “宮路山”山頂まではちょっとした足慣らし、15分ほど休憩し、次はいよいよ “五井山”を目指します。“五井山”への縦走路は思っていたよりアップダウンが多いコースで、低山ながら登山気分を味わえます。時折、冷たい風が頬をさします。きれいに整備された道はとても歩きやすく、木々の間から差し込む光が心を和ませてくれました。

 宮路山を出発して約1時間15分、ようやく“五井山”山頂に到着しました。ここでも目の前に三河湾が広がっています。宮路山同様、視界を遮るものは何もありません。眼下には蒲郡の町並みと、蒲郡を象徴する竹島や大島小島が見えます。きらきらと輝く海にポツンポツンと大小の島々が浮かび、その絶景にみんな見とれていました。

 山頂は広く、木のベンチがいくつもあり、たくさんの人たちが休んでいました。その中に自分たちで軽食を作って楽しんでいる若者たちがいて、湯気を立てている料理がとてもおいしそうでした。それを見て「寒い日はやっぱり、温かい物がいいわね」と言いながら、私たちは持参したおにぎりを頬張りました。
 景色を眺めていると突然、「御嶽山が見えるわよ!」というスタッフの声。「どこどこ?」と探していると、遠くに雪を被った真っ白な“御嶽山”を発見! みんな大興奮でした。
 山頂からの眺めをたっぷりと堪能し、11時20分、下山開始。短い休憩をとりながら、来た道をひたすら戻りました。12時50分、無事駐車場に到着。晴天の日曜日とあって、大勢の家族連れやグループとすれ違い、“宮路山・五井山”の人気の高さがよくわかりました。 

 今年の初登山はたった半日でしたが、地元の自然を心ゆくまで満喫しました。近場にこんなにも楽しめるハイキングコースがあることを知り、今度は紅葉の季節にみんなで訪れてみたいと思いました。