京都①

 昨年末、“スタッフだより”で少しお知らせしたように、2月21日、JR東海ツアーズの“ぷらっと・ 旅”を利用して、冬の京都を訪れました。
 冬の寒さが厳しいことで有名な京都旅行を最も寒い2月に選んだ理由は、何と言っても観光客が少ないことと、格安な料金で1日たっぷり楽しめることです。今回は京都駅周辺にある有名社寺  “伏見稲荷大社” “東福寺” “三十三間堂” “東本願寺” “西本願寺” “東寺”を巡ります。
 京都を旅するのは修学旅行以来というスタッフがほとんどで、しかも新幹線で行けるとあってみんなウキウキ、豊橋駅午前6時45分発の新幹線 “こだま” に乗り込みました。

 新幹線の車窓から景色を眺めていたら、あっという間に京都駅に到着。駅の構内は通勤 ・通学客でいっぱい、人込みをかき分けてJR奈良線に乗り継ぎ、8時20分、稲荷駅に着きました。駅を出ると、すぐ目の前に鮮やかな朱色の鳥居がそびえるように立っています。“伏見稲荷大社” は、外国人観光客に人気ナンバーワンの観光スポット、みんな興味津々で鳥居をくぐりました。

 “伏見稲荷大社”の最大の見どころは、美しい“千本鳥居”。無数の赤い鳥居が“稲荷山”山頂まで延々と続いています。テレビや写真で見たことはありましたが、直接見るのは初めてというスタッフばかり、「きれいね」「神秘的!」と、みんな目を輝かせていました。

 観光客に混じって私たちも、隙間なく建つ鳥居の間を足早に進みます。朱色の鳥居に囲まれた参道を登っていると、まるで別世界に入り込んだようです。それがどこまでも続いていて、緩やかな坂道がやがて階段へと代わる頃には、汗でびっしょり。残念ながら今回は時間がなく、山頂までは行けませんでしたが、鳥居の朱色と木々の緑のコントラストがとてもきれいでした。鳥居はお参りに来た人が「願いごとが通った」というお礼の意味を込めて奉納したもので、江戸時代から続いているそうです。  
  鳥居の裏には奉納者名が記されていて、知っている名前を見つけるたびに盛り上がっていました。千本鳥居をぬけて社殿に戻ってくると、辺りは観光客であふれていてビックリ、人気の高さを実感。“伏見稲荷大社”はとても華やかで見どころ満載、外国人に大人気の理由がよく分かりました。スタッフの中には「いつか家族を連れて“お山巡り”をしたい!」と言う者もいました。

 “伏見稲荷大社”から歩くこと20分、“臨済宗大本山・東福寺”に到着。伏見稲荷大社の華やかな雰囲気から一変し、黒塗りの重厚な“三門”がドーンと現れ、その大きさと荘厳な美しさに「すごーい!」と、感動の声が上がりました。 

 “東福寺”は京都五山の一つで、現存する最古で最大級の大伽藍として名高く、境内は京都随一の紅葉スポットでもあります。秋になると必ずと言っていいほど、その見事な紅葉の様子がテレビで報じられます。
 “通天橋”から境内を見下すと、葉を落としたもみじの林が一面に広がっていて、じっと寒さに耐えて芽吹きの春を待っているようでした。通天橋を渡り、“普門院”の前で少し休憩。美しい庭園を眺めて「落ち着くわね」と、静寂な世界に浸りました。観光客の人込みに圧倒された伏見稲荷大社と比べると、“東福寺”は観光客もまばらでとても静かでした。

 “東福寺”から歩いて、次は“三十三間堂(蓮華法院)”へ向かいます。“三十三間堂”は後白河上皇が平清盛に命じて造らせた仏堂で、約120mもある本堂には観音立像が1001体、本尊は千手観音、両端には雷神と風神像が祀られています。本堂の柱間(はしらま)が33あるところから“三十三間堂”と言われています。

 本堂に入ると「ここは修学旅行で来たわ」との声が飛び交い、若かりし頃の記憶が蘇ってきました。薄暗い堂内にすらりとした観音像が1001体も並ぶ光景は、まさに圧巻! みんな目を凝らして見つめていました。薄っすらと微笑みを浮かべたその表情は一つ一つ違っていて、すべての観音像に名前が付けられているそうです。つい先日、国の文化審議会がこの千体観音像を重要文化財に指定するよう答申し、国宝になるのも間近なようです。

 本堂の西庭で行われる“通し矢”も有名で、毎年1月には全国大的(おおまと)大会が催されます。テレビで報じられているその様子を思い浮かべながら、庭を散策しました。

 次の“東本願寺”へ向かう途中、鴨川のほとりで昼食タイム。川に浮かぶ鴨たちを眺めながらお弁当を食べました。川岸に並んで腰を下ろしている私たちを、外国人観光客が興味深そうに見ていました。外国人に、私たち熟年集団はどう映ったのでしょうか……。

 次は、地元の人たちから「お東さん」「お西さん」として親しまれている“東本願寺”と“西本願寺”を訪れました。もともと“本願寺”は一つでしたが、一向一揆を恐れた江戸幕府によって政治的に西と東に分けられました。
 “東本願寺”の正式名は“真宗本廟 (しんしゅうほんびょう)”、宗祖・親鸞聖人の木像を安置する“御影堂(ごえいどう)”は広さが972畳もあり、世界最大級の木造建築です。

 境内には、女性の髪と麻を撚り合わせて編まれたという“毛綱(けづな)”が展示されています。色は黒くいかにも頑丈そうで、長さ69m、太さ約30㎝、重さ約375㎏もあります。毛綱は、“御影堂”と“阿弥陀堂”を再建するとき、巨大な木材の搬出 ・ 運搬の際に引き綱が切れるという事故が相次いだため、より強い引き綱として全国各地から寄進されたものです。人間の髪の毛がそんなに強いことに驚きですが、それ以上に深い信仰心がうかがえ、みんなじっと見つめていました。
 広い “御影堂”と“阿弥陀堂”で参拝し、次の“西本願寺”へ向かいます。

 “西本願寺”の正式名は“龍谷山本願寺(りゅうこくざんほんがんじ)”、境内には“御影堂”や“阿弥陀堂”などの国宝のほかに多数の重要文化財があり、世界遺産にも登録されています。
 また“御影堂”の前には、根を天に広げたような形から「逆さイチョウ」と呼ばれる樹齢約400年の大イチョウが強烈な存在感を放っています。根本から何本もの幹が出ていて、「これが本当にイチョウ?」と、初めて見る珍しいイチョウに、みんな目を丸くしていました。
 日本建築の美をたっぷりと堪能し、次の“東寺(教王護国寺)”に向かいます。

 最後の“東寺”にはタクシーで移動しました。運転手さんから「お客さんはラッキーですよ。今日は縁日がたっていますから」と言われ、楽しみが倍増。21日は弘法大師の命日にあたり、大勢の人で賑わっていました。

 “東寺”は、唯一残る平安京の遺構で、創建からおよそ1200年、世界遺産にも登録されています。私たちは“東寺”の象徴である“五重塔”を見学。目の前にそびえ立つ五重塔は、高さ55mで日本一。木々に囲まれた凛々しい姿に「わあー、すてき!」と、感動の声が上がります。ガイドさんの説明を受け、心柱を囲むように安置されている金剛界四仏像を拝見しました。

 庭園を散策していると、白や薄紅の梅が咲き誇り、春がすぐそこまできていることを実感。縁日では、干し柿や干し芋・陶器などのお店に混じって、着物の古着が売られていて「さすが京都ね!」と、みんな驚いていました。

 予定していた日程を無事終え、タクシーで京都駅に戻りました。新幹線の中では、みんな口々に「楽しかったね」と、巡った名所を思い出していました。

 “京都”と言うと、とても遠いイメージがありましたが、思いのほか近く「こんなに近いのなら、またぜひ行きたい!」と、早くも次の名所のことを話しています。登山ももちろん楽しいですが、古都を訪ねて歴史に思いを馳せる旅は、見聞を広げたり、日本文化の美を心ゆくまで味わうことができます。
 皆さんも、機会がありましたら訪ねてみてはいかがでしょうか。