越前岳

 健康フレンドでは、年の初めは“雪山登山”が恒例となっています。今年も「2月になったら、雄大な富士山が眺められる雪山に登ろう!」と、計画を立てていました。1月末には、足馴らしのために地元の“湖西連峰”を6時間ほど歩き、準備万端、その日が来るのを待っていました。ところが例年にない大雪のため、なかなか日程が決まりません。天気予報を毎日チェックしては、ヤキモキ。やっと、3月9日に決まりました。目指すは、古くから富士山展望の名山として人気の高い“越前岳”です。
 “越前岳”は標高1504メートル、富士市・沼津市・長泉町・裾野市の4つの行政区域にまたがる“愛鷹(あしたか)連峰”の最高峰。北側に富士山の秀麗な姿が望めます。初級者でも安心して登れる山ということで、心ゆくまで富士山を眺められると楽しみにしていました。

 早朝4時、豊橋を出発。トンネルの多い新東名高速道路を東に進み、静岡のサービスエリアで「寒い、寒い」と言いながら身支度を整えました。新富士インターチェンジを出、遠くに雪をかぶった山々がしだいに近くなると、自然と心が弾みます。登り口付近までくると、雪道に備えてチェーンを装着。みんなの気持ちも引き締まりました。

 午前7時20分、辺り一面雪で真っ白な“山神社駐車場”に到着。天気予報では晴れなのに、期待はずれの曇り空。晴れてくることを願いながら、スラリと伸びたヒノキが立ち並ぶ登山道をスタート。
 手入れの行き届いたヒノキは、空に向かって凛と立っている姿がとても清々しく、心が癒され、エネルギーが満ちてきました。登山道は雪が凍っていてツルツル、転ばないように注意して進みます。雪が多くなってきたのでアイゼンをつけ、一歩一歩踏みしめながら登ります。

 8時20分、緩やかな坂を登ると“富士見峠”に到着。10分ほど休憩し、再び登り続けます。坂は緩やかですが、木の根が張り出していて、デコボコした歩きにくい道でした。下見をしたスタッフの話のよると、雪が積もっているおかげでまだ歩きやすいのだとか。
 登山道には所々、登山靴がズボッとはまったような30 ~ 40㎝ほどの穴が開いていて、雪の深さにビックリ。「これにはまっては大変!」と、足元をよく見て登ります。また、木の枝が登山道まで伸びていることが多く、「頭上注意」と後ろの人に伝えながら登りました。

 9時10分、“鋸岳(のこぎりだけ)展望台”に到着。その名の通り、ギザギザした鋭い歯のような頂が前方に見えます。その左側には位牌岳(いはいだけ)。どちらの山も個性的で見ごたえ十分。しばらく景色を堪能し、再び歩き始めます。時々、「富士山はどこ?」という声があがり、その度にみんなで捜しますが、雲にすっぽりと覆われ、その姿を見ることはできません。「でもきっと望めるはず」と気を取り直して、きつくなってきた坂をひたすら登りました。

 10時15分、“富士見台”に到着。ここでも期待していた富士山の展望はお預けでした。しかしこの季節の越前岳は富士山だけでなく、“霧氷”の美しさにも定評があります。葉を落とした木々の枝には、すべて同じ方向に繊細な氷がびっしりと付いていて、その風景はとても幻想的。霧氷の木々が延々と続き、みんな一斉に「わあ、きれい!」と喚声をあげ、うっとりと見とれていました。スタッフの一人が「まるで吉野の千本桜のようね」と、みんなも頷きました。これまで何度か霧氷を見ましたが、これほど清楚で美しいと感じたのは初めてでした。時おり、枝に積もった氷が風花のように舞い、心地よく頬をなでます。美しい霧氷のトンネルのおかげで急な登り坂も、少しも辛く感じませんでした。

 10時50分、ついに“越前岳”の山頂に到着。それまであまり登山者と出会わなかったので、大勢の人がいたのに驚きました。明るく開けた山頂は一面の雪景色、ここの霧氷もまた格別でした。眼下にうっすらと雪をかぶった峰が連なり、その向こうには駿河湾と伊豆半島が広がっています。雲がなければ、北側にドーンと富士山を望めるはずですが、その願いは叶いませんでした。雪の上にシートを敷き、心洗われる絶景を眺めながらお弁当を食べました。

 11時35分、心もおなかも満足し、下山開始。今回の登山コースの終点“十里木(じゅうりき)登山口”を目指します。急な雪の坂道をしっかりと足を踏みしめて、ひたすら下っていきます。ブナの樹林帯を通り抜け、木のテーブルとベンチのある“馬の背”で最後の休憩を取りました。ここは、正面に富士山の全景が眺められるビューポイントですが、やはり富士山の雄姿を見ることはできませんでした。それでも目の前に広がる富士の裾野は圧巻  木々の深緑と枯れた芝生のベージュのコントラストが、とても鮮やかでした。
 丸太でできた長い階段を下り、午後1時、全員、無事に到着。雪解けで靴もアイゼンも泥だらけでしたが、久しぶりの雪山登山と豊橋ではめったに見ることのない雪景色に、みんな大満足でした。

 帰りはお楽しみの温泉  今回はなんと、“塩からいお湯”でした。主成分はナトリウムとカルシウムの塩化物だとか。水は一滴も加えていないというのに、不思議とお湯はサラサラ。体が芯から温まり、疲れがスーッと軽くなったような気がしました。

 予定では迫力ある富士山の絶景を満喫できるはずでしたが、お預けとなってしまいました。昨年の12月に河口湖北側の“御坂連峰”を縦走しましたが、その時も富士山を見ることはできませんでした。
 「今度こそ、絶対に富士山を見たい!」と思って、晴れの日を選んで出かけたのですが、天気予報ははずれ、とても残念でした。いつかまた、もう一度トライして、雄大な富士の景色を皆さんにお伝えできたらと願っています。