子ども手当法案成立!?

 先月26日、鳩山政権の目玉政策といえる“子ども手当法案”が成立しました。今年度は当初案の半額が支給され、総額約 2.3兆円に上るとのこと。もし来年度から満額支給となれば、その倍の4.6兆円になるわけですから膨大な金額と言えます。子ども手当については、以前より賛否両論さまざまな意見が出ています  「何の効果があるかも考えずに、2兆3千億円をばらまけるほど我が国の財政に余裕はない。1人1万3千円を配ることそのものが目的で、効果は不明」 と反対する自民党。それに対し鳩山首相は  あくまでも「子ども手当の目的は社会全体で子育てを支援していくというもの。少子化対策の一環である」と主張し、財源問題と支給対象の問題を抱えたままスタートしてしまいました。 

 今回はこれについて私たちの考えを少し述べたいと思います。

 “子ども手当”とは、いったい何のためにあるのでしょうか。民主党は少子化対策として掲げていますが、とてもそうは思えません。

 新聞に、手当を支給される親たちの使い道が載っていましたが、トップは「子供の将来のための貯蓄」。他には「生活費や教育費・外食などの娯楽」に当てるというものでした。財源不足が懸念されている現状では、子ども手当を当てにして“子供を産もう”などと考える人はまずいません。これでは、少子化対策がどのくらい実現できるか、疑問です。私たちは反対論者と同様、子ども手当には反対です。どうみても『ばらまき政策』・選挙のための『人気取り政策』としか思えないからです。

 そもそも、少子化対策が本当に必要なのかも疑問です。日本の未来にとって本当に大切なのは単に子供の数を増やすことではなく、「子供をどのように育てていくか」という教育内容・教育の方向性の問題なのです。そうした明確なビジョンのもとに政策があり、社会全体で子育てを支援していくべきものなのです。安易に“親にお金を支給すればそれでよし”とするのではあまりにも情けなく、薄っぺらな政策としか言えません。お金やモノを与えるだけで子供が幸せになるわけではありません。それで子供の心が豊かに育つわけでもありません。「物欲にとらわれずに、人のために役立つ人間・奉仕できる人間にする」  そのために真剣に子供と向き合い、子供の心の成長を促していくのが“親の役目”だと考えます。

 しかしほとんどの大人も政治家も経済の発展が中心で、本気で子供たちの将来の幸福を考えているとは、とても思えません。結局、膨大な借金だけが将来の子供たちに残されるのでは、子供のためにはならないような気がします。

 今、日本にとって老人介護は大きな問題です。『介護疲れの末の殺人』という悲惨な事件が報じられるたびに、「どうしてもっと早く手を打つことができなかったのか」という気持に駆られます。スタッフの中にも親の介護をしながら業務をこなしている者がいますが、介護の大変さは実際に体験した者でなければ分かりません。介護をしている者にとって、介護施設や介護従事者は、まさに救いの手なのです。

 皆さんの中にもご存知の方がいらっしゃるかと思いますが、介護施設に行ってみると、若い介護従事者の方が大勢働いています。決して華やかでもきれいでも楽な仕事でもありません。それどころか正反対の仕事なのに     「お年寄りの方のお世話がしたい」「介護の仕事がしたい」という熱い志を持った若者たちがいることに本当に感動します。

 しかし介護福祉士の現実は、「給料が安すぎて続けていかれない」というものです。年収は300万円~350万円前後が平均水準となっていますが、中には30歳で年収200万円、30時間以上のサービス残業で心も体もボロボロという人もいます。男性においては、とても結婚など考えられないと言います。2009年に介護報酬が改定されましたが、約半数の介護福祉士は「給料は上がっていない」と答えていますから、実際はかなり厳しいようです。政府にはもっと大胆な改善策を早急に実行して欲しいと強く思います。そうでなければ、いつまでたっても介護従事者の環境は改善されず、奉仕精神を持った奇特な若者たちがますます離れていってしまいます。それこそ悲しいことです。

 子供にお金をばらまくより、一番弱い立場の人たちと、それを支えていこうという者たちを政府が援助してこそ“友愛精神”と言えるのではないでしょうか。私たちは、たとえ経済レベルが下がったとしても、社会に貢献している事業や、それに携わる人々にはしっかりと政府が援助していくべきであると考えます。そのためには制度・システムを根本から見直し、必要な予算を確保しなければなりません。そうしてこそ「社会のため、人のために役に立ちたい!」という若者が増え、真に豊かな日本へと変わっていくことができるのではないかと思います。

 皆さんはどう思われますか?