クローン牛・豚は安全か

 少し前になりますが、日本の内閣府食品安全委員会が“クローン牛・豚は食品として安全である”と発表したことに対し、消費者団体が「人間が食べて本当に安全なのか? 本当にきちんと研究されているのか?」と不安を訴えていました。

 これについて私たちの考えを少し述べたいと思います。

 私たちもクローン牛・豚は反対です。しかしその理由は消費者団体とは違い、クローンの肉が安全かどうかということよりも “肉食”自体が間違っていると考えるからです。肉食の問題になると、「気持はあっても、家族や周りとの兼ね合いでなかなかやめられない……」と、心苦しく感じている方もいらっしゃることでしょう。肉食の問題を単に健康面というだけでなく、人間の生き方という点から考えてみたいと思います。

 皆さんは村上和雄氏をご存知でしょうか。筑波大学名誉教授で、長年遺伝子研究に取り組まれノーベル賞候補といわれるほどの著名な方です。村上氏の本を読むと、生命の尊厳について改めて考えさせられます。

 村上氏は著書の中でこう語っています  「人間を含めたすべての生物の生命(いのち)は、人間の工夫や知恵でつくられたものではなく、“サムシング・グレート”(偉大なる何者か)からの贈り物であることを思い出す必要があると思います。そんなに思い上がってはいけない、と私はいいたいのです。」

 私たちも、まさにその通りであると考えます。人間が勝手に他の生命を奪っていいはずがありません。ましてや食べるためにクローンをつくり出すなど……。人間はわざわざ動物を殺して食べなくても十分に生きていけます。“自分たちが食を楽しむためだけに動物を殺して食べる  とても野蛮で残酷なことです。動物の生命も、人間と同じように神から与えられた大切なものです。肉食は、動物の尊厳性をふみにじる愛情のない行為ではないでしょうか。

 最近では環境問題やエネルギー問題が騒がれ、多くの人々の関心の的になっています。もちろん“エコ”も大切ですが、肉食を減らしていくことは、それよりもっと重要な問題なのです。肉食の問題も環境・エネルギー問題も元をたどれば、人間のエゴ・とどまることを知らない物欲から発生しているのです。地球上の大半の人間(特に先進国の人々)は、必要以上のぜいたくをしています。そして、それを何としても守りたいと思っています。そうした中でいつの間にか、「他の生命を尊重する心」を忘れてしまったのです。その重要なことに気がつかないかぎり、どれほど環境やエネルギーについて云々しても、人間は本当の幸せを手にすることはできないと思います。

皆さんは、どのようにお考えでしょうか?