釈迦ヶ岳

 新型コロナによる感染爆発がひとまず落ち着き、ホッと胸をなでおろしている方が多いのではないでしょうか。私たちも「これで安心して山に行ける!」と、久しぶりに登山の準備にとりかかりました。12月に入っていきなり冬型の気圧配置になりましたが、当日の予報は晴れ、期待が膨らみます。 今年最後の登山は、三重県の鈴鹿山脈にある“釈迦ヶ岳(しゃかがたけ)”です。釈迦ヶ岳は“鈴鹿セブンマウンテン”の一つで、その真ん中に位置しています。標高は1092mと、それほど高くありませんが、鈴鹿山脈の中でもアルプス級の岩場や稜線が楽しめる名峰です。鈴鹿セブンマウンテンは、御在所岳、藤原岳、竜ヶ岳など鈴鹿山脈にある人気の7つの山の総称で、関西地方や東海地方から多くの登山者が訪れています。

 12月2日、朝5時に豊橋を出発。2時間ほど車を走らせると鈴鹿山系の山々が見えてきました。山稜は薄い雲に覆われていますが、朝日がさして虹が出ています。「虹が見える!」と、みんな目を輝かせていました。

 7時、“朝明(あさけ)渓谷”の駐車場に到着。身支度を整えて登山口に向かいました。釈迦ヶ岳の登山ルートは5つほどあり、どのルートもさまざまな見所が楽しめるコースです。私たちは、最も人気のある“中尾根ルート”を選びました。ここは“猫岳” “ハト峰峠”を通る周回コースで、歩行時間は私たちの足で7時間ほど。

 登山口の辺りは、林の中を緩やかな坂が伸びていて歩きやすく、久々の登山にはちょうど良い足慣らしです。落ち葉の上には所々雪が残っていて、一歩一歩、踏みしめながら歩きます。道はしだいに急登になり、登るにつれて足元の岩や木の根についている雪が多くなってきました。時々、木々の間から粉雪が降ってくる中、滑らないように注意しながら登っていきます。

 1時間半ほど歩いて“鳴滝コバ”に到着。ここまでが、やせ尾根の登りが続く最初の難所です。天気が良ければ“御在所岳”を望むビューポイントですが、雲に隠れて展望がききません。そのかわり、木々にはビッシリと霧氷がついて山全体が輝いています。霧氷の林の美しさに目を奪われ、一斉に歓声があがりました。

 危険なガレ場を迂回して尾根を目指します。アップダウンを繰り返しながら尾根に出ると、そこは幻想的な銀世界。その中に、みんなが着ている鮮やかなヤッケの色がくっきりと浮かんでいます。

 歩くたびに雪と落ち葉と土が塊になって登山靴に付くので、だんだんと足が重くなります。誰かが「まるで、天狗の高下駄を履いているみたい」と言って笑わせました。時々、ストックでポンポンと靴の底をたたいて、ついた雪の塊を落としながら進みました。

 もう少しで“釈迦ヶ岳”の最高点、その先が山頂です。その前に一番の難所“キレット”が待っています。尾根道の平らな所でアイゼンを着けて、いよいよキレットにさしかかります。北アルプスほどの険しさはないものの、霧の中にそそり立つ岩壁に雪がついて、荒々しく迫ってきます。道の両側には深い谷が切れ落ちていて、みんなに緊張が走ります。慎重にキレットを越えて進みました。

 釈迦ヶ岳の最高点を過ぎ、少し歩いて正午頃、ようやく山頂に到着。「やったー!」と、みんなの顔がほころびました。残念なことに、ここからも展望は望めませんでしたが、霧氷の林はまるで咲きほこる桜のよう、みんな、その見事な景色に見とれていました。頂上から少し下って、風のあたらない場所で昼食をとりました。 

 最後のピークの“猫岳(1058m)”を越えた辺りから、積もっていた雪が少しずつ少なくなってきました。さらに下って、こんもりと大きな一枚岩の“ハト峰峠”の標識を見上げながら、アイゼンを外しました。

 いつの間にか登山道からはすっかり雪が消え、霧氷も消えていました。雲が切れて青空がのぞき、遠くに伊勢湾が見えています。湾岸の町には陽がさしていて、真冬のようだった山頂の景色は、まるで夢の中の出来事のようです。「さっきの雪景色が信じられない!」と言いながら、落ち葉を踏んで下山しました。

 予定の時間を1時間ほどオーバーしましたが、午後3時50分、無事駐車場に到着。少しハードな登山でしたが、みんな、全員で頂に立つことができた達成感と安堵感に満たされていました。予想もしていなかった白銀の世界を堪能することができ、心身共にリフレッシュしました。「今度は、シロヤシオが咲く頃に登りたいね」と話しながら帰路につきました。

 登山は最高のリフレッシュ法、皆さんも親しい方を誘って、山歩きを楽しんでみてはいかがでしょうか。

月日が経つのは本当に早いもので、2021年も残すところあとわずかとなりました。一年を振り返ると、今年も“新型コロナウイルス”に振りまわされた年でした。とりわけ、多くの人が期待していた“東京五輪・パラリンピック”は、開会式をはじめほとんどの競技が無観客という異例の大会となりました。コロナ禍での開催に賛否両論がある中、参加した選手が皆、感謝の言葉を口にしていたのがとても印象的でした。

皆さんは、どのような一年でしたでしょうか。今年は、私たちにもいろいろなことが起き、心に残る年となりました。また、今年も皆さまから、嬉しいメッセージをたくさんいただきました。スタッフだよりの感想やフレンドの商品を信頼してくださっているご様子や、「食事改善をしたら、痩せて健康になりました」といった喜びの声など。皆さま方との心の絆をいっそう深めることができ、本当に嬉しく思っています。

 来年も、一人でも多くの方のお役に立てるよう、そしてもっともっと信頼の輪を広げていけるように精いっぱい努めてまいります。

 迎える新しい年が、皆さま方にとって希望に満ちた実り多い年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。