本宮山

 昨年末には、新型コロナウイルスの感染もいったん落着きをみせ、このまま終息するのではないかと、期待した方も多かったのではないでしょうか。ところが、新たな変異株“オミクロン”の出現で、残念ながら元のコロナ禍に逆戻りしてしまいました。

 私たちも県をまたいでの登山は諦め、今回は、私たちのホームグランドにもなっている地元の名山“本宮山(ほんぐうさん)”に登ることにしました。

 本宮山は東三河を代表する山で、標高は789mと高くはありませんが、豊川市・岡崎市・新城市の3つの市に裾野が広がる均整のとれた美しい山容をしています。山頂へはそれぞれの市から登山道が伸び、山頂付近には砥鹿神社(とがじんじゃ)”の奥宮が祀られ、山全体が神聖な領域になっています。空気の澄んでいる冬には、展望スポットから富士山や南アルプスを望むことができます。

 砥鹿神社は平安時代からの歴史を持ち、古くから“三河国一宮”として、人々の信仰を集めてきました。

 2月15日、朝6時半に豊橋を出発。豊川に向けて10分ほど車を走らせると、遠くの空に青くクッキリと映える“本宮山”の姿を見つけました。

 7時10分、豊川の“ウォーキングセンター”に到着。朝日がまぶしく輝いて天気も良好です。身支度を整えて登山口に向かいました。登山道は奥宮への参道でもあり、入り口には立派な石の鳥居が立っています。

 鳥居をくぐって、いよいよ登山開始。雑木林や檜の林の中をゆっくりと登っていきます。登山道はよく整備されていて、気持ちよく歩くことができました。 

 登山道のわきには一町(約109m)ごとに“標石”が置かれていて、登山口の一町目から最終地点の奥宮の五十町目まで続いています。標石の側面には「嘉永三年」(1850年)と刻まれたものもあり、歴史を感じさせました。昔の参詣者もきっと「一町目、二町目……」と、標石を頼りに登ったことでしょう。私たちも見落とさないように、まず奥宮を目指しました。

 1時間ほど登ると、初老の夫婦が下山してきました。まだ朝の8時なのに、いったい何時から登り始めたのでしょうか? その後も軽装の人たちが次々と下ってきて、フル装備に身を包んだ私たちとすれ違いました。

 本宮山の中腹までは、林の中を散歩するような道もあって、一息つくことができました。“うぐいす峠”まで登ると、ここも尾根伝いに平らな道が続いています。ずいぶん登ったはずなのに、どこからか車の音が響いてきます。不思議に思って木の間から見下ろすと、広い自動車道が東西に走っていました。私たちが立っている場所は、なんと新東名高速道路のトンネルの真上だったのです。みんな、奇妙な感覚でそこを通りました。

 8時15分、林道との分岐に到着。本宮山の登山道には、林道と交差する所が2箇所あり、ここが1つ目の分岐点です。ここまでで3分の1ほど登ったことになります。少し休憩をとって、さらに上を目指しました。

 ここから岩場のある登りが続き、最大の難所“馬の背岩”と“梯子岩(はしごいわ)”があります。気合を入れて進みました。道をふさぐ壁のような“馬の背岩” をよじのぼり、少し歩くと“梯子岩”が現れます。2つの岩が斜めに伸びていて、まさに“梯子”のようです。設置してあるロープを手繰りながら注意して登ると、“あずまや”に到着。ここは展望台になっていて、眼下に豊川の街並みが広がっていました。

 “あずまや”から30分ほど登ると、2つ目の林道の分岐点に出ます。ここから奥宮の社殿までが最後の急登です。清水が流れる‟手水舎(ちょうずや)”を過ぎると、境内らしい雰囲気が漂い、杉の林の中を縫うように丸木や石を並べた階段が続きます。一歩一歩踏みしめながら登り、10時ちょうどに奥宮に到着。

 奥宮の周りには、社殿を覆うように杉や檜の古木が立ち並び、厳かな雰囲気に包まれています。社殿に拝礼して裏手にまわると、樹齢千年を誇る“杉の御神木”が高くそびえていました。その側に参拝者の休憩所が設けられていて、壁には“本宮山に登ろう会”作成の「登山番付表」がデカデカと掲げてありました。

 令和2年版と書かれた番付表には、なんと……

 この記録に続く人たちの名前や年齢がギッシリと記されていました。どれもこれもすごい記録で、「絶対に真似できないわね」とみんな、ただただ驚いていました。それにしても、1日に15回も登るなんて、いったいどれくらいの速さで歩く(走る)のでしょうか……。

 社殿から15分ほど歩いて、10時15分、本宮山山頂に到着。「着いた!」と歓声が上がりました。山頂には電波塔が乱立し、奥宮の神聖な雰囲気とは正反対です。その傍らに「本宮山」と書かかれた小さな標識が、遠慮がちに立っています。初めてここに来た時には、みんな「本当にここが山頂?」と目を疑いました。

 たくさんの電波塔を背にして、太陽の光が降り注ぐ南側の斜面で長めの休憩をとりました。少し霞のかかった三河湾を眺め、暖かな光をいっぱいに浴びながら早めの昼食をとりました。

 心もお腹も満足し、11時、下山開始。登ってきた道を転ばないように慎重に下っていきます。2月にしては暖かな1日で、心配した雪もなく岩場も楽に降りることができました。午後1時15分、無事登山口に到着。この日の歩行タイムは3時間45分、まずまずのペースでした。

 みんなで心を一つにして山頂を目指し、自然の息吹を全身で感じて、身も心も癒されました。地元の山は、私たちにとって大切なホームグランドです。「また登りに来よう!今度は2往復?」と、話しながら帰路につきました。

 登山は、私たちにたくさんの感動とエネルギーを与えてくれる最高の健康法です。これからも、登山で心身ともにリフレッシュして、いつまでも元気で、健康フレンドの仕事に、奉仕活動に、全力で取り組んでいこうと思っています。