裏山にイノシシが出現

 以前にも“スタッフだより”でお伝えしましたが、私たちにとって裏山は大切なトレッキングコース、健康に欠かせない場所です。自然のエネルギーをたっぷりと浴びながら汗をかくと、心も身体もリフレッシュして、「また頑張ろう!」と力が湧いてきます。みんなでよく「すぐ近くにこんな素敵な山があって、私たちは本当にラッキー!」と話し合っています。
 ところが去年の秋、突如、フレンドのすぐ裏の茂みの陰に“箱罠(はこわな)”と呼ばれる鉄製の大きな檻が設置されていて、ビックリ! 檻を見るのは初めてというスタッフが多く、その話題で盛り上がりました。檻は、豊橋市がイノシシの被害を防止するために付近の山に設置した内の一つでした。

 裏山には、イノシシやウサギ・リス・タヌキ・カモシカなど多種類の野生動物が生息しています。なかでもイノシシの数は断トツ。いつも登山道を激しく掘り起こし、夜になるとフレンドの裏までやってきて、ゴソゴソとエサを漁っています。タローがいたときは番犬になっていましたが、タローがいなくなって早4年、でも犬小屋はそのまま勝手口に置いてあります。泥棒よけの小屋を見て、私たちは「タローの小屋に “ウリ坊” が入っていたらニュースになるのにね!」と、冗談を言っては笑っていました。
 しかし考えてみると、イノシシと言えば“猪突猛進”という言葉が浮かぶほど凶暴な動物、そのイノシシが辺りをうろついているのですから、笑い事ではありません。

 ここ数年、全国各地で野生動物による被害が深刻化し、クマやシカ・イノシシなどが畑を荒らしたり、住宅街に出没しているニュースがたびたび報じられています。私たちも登山に行くと、木々や農作物を守るためにネットや電線が張られているのをよく見かけます。
 農林水産省が今年発表した「平成27年度、野生鳥獣による農作物被害状況」 によると、全国の被害額は約176億円にものぼるとのこと。鳥獣別ではシカが60億円、イノシシが51億円、サルが11億円、カラスが17億円。高齢化や過疎化が進む農家では、あまりの被害の大きさに働く意欲を失ってしまうと言います。それでも、鳥獣被害対策が効果を上げているらしく、前年度より15億円減少しています。
 鳥獣被害は豊橋市も例外ではなく、数年前から対策を開始し、イノシシについて言えば、一昨年は143頭も捕獲したそうです。

 箱罠は全長が約1.5m、中にはイノシシをおびき寄せるためにジャガイモが置かれ、入口から誘い込むように米ぬかが撒かれています。興味津々の私たちは、中を覗き込んでは「これで本当にイノシシが入るのかしら……」と、首を傾げていました。案の定、設置から半年以上経ってもイノシシが捕まったという話はいっこうに聞こえてきません。いつしかその話題も出なくなっていた頃、一人のスタッフから驚きの報告がありました。
 スタッフがいつものようにトレッキングをしていると、ミカン畑の近くに設置されている檻のそばで一人のおじさんを発見、どうやら定期的に檻を見回っているようです。スタッフがここぞとばかりに尋ねました。

スタッフ「イノシシが掛かっているのを一度も見たことがありませんが、本当に獲れるんですか?」

おじさん「獲れるよ! 親は警戒心が強くて獲れないけれど、“ウリ坊” は好奇心が旺盛だから親よりも先に檻に入ってしまうからね。一度に4匹獲れたこともあるよ。かわいそうな気もするけど、半年も経てば大人になって悪さをするから仕方ないね」

 スタッフの話を聞き、みんな「あれは、ウリ坊を捕獲する檻だったのね~」と大きく頷き、ある疑問がわいてきました。「そのウリ坊、その後どうなったのかしら……」、するとスタッフが思い出したように「そういえばあのおじさんの顔、妙にテカテカしていて、ツヤツヤだったわ」とポツリ。「最近は“ジビエ料理”が流行っていることだしね~」と、みんなで顔を見合わせました。
 フレンドのすぐ裏には、今も箱罠が置かれています。それを見るたびに私たちは、ちょっと複雑な気持ちに駆られるのです。

 先月、超大型の台風21号が上陸し、土砂崩れや冠水など各地に大きな被害をもたらしました。被災された方々には、心からお見舞い申し上げます。スタッフ一同、一日も早い復旧をお祈りいたしております。