裏山に突如ササユリの群生地

 日に日に暑くなり、健康フレンドの裏山もすっかり夏山に変身しています。季節ごとに変わる自然の風景は、私たちの心を癒してくれます。とくに新緑がまぶしい春から初夏にかけては、一年のうちで最もさわやかな季節です。スタッフにとって、この時期に“ササユリ”を探しながら裏山を歩くのが楽しみの一つです。笹原の中に可憐な淡いピンク色の花を見つけると、その日はちょっと得した気分になります。

 今年は寒かったせいか、なかなかササユリに出会えなくて、私たちは少し寂しい思いをしていました。ところが6月の上旬、裏山に登りに行ったスタッフの一人が「すぐそばにササユリがいっぱい咲いているよ! 」と、あわてて戻ってきました。さっそく見に行くと、そこは歩いて1分ほどの登山道わきの林の中、数年前に営林署が間伐をしてから日が当たるようになった場所です。間伐材が放置され、生い茂った笹や草のあいだから点々と20本ほどのササユリが顔を出していたのです。あまりの突然のことに、まるで奇跡でも起きたのかと思うほど、みんなびっくり! 一面緑色の中にピンク色のササユリが浮かんで、キラキラと輝いていました。よ~く見ると、一本一本に支柱が添えられ、小さなメモが付いています。毎年必ず、真っ先にササユリを見つけては「自然を大切に」とか「取らないでください」というメモを付けて保護している人がしてくれたようです。

 “ササユリ”は本州の中部から九州にかけて分布し、山の中の草原や太陽の光が射し込む明るい森林に育ちます。風によって種が運ばれて自生しますが、自然の条件が整わないかぎり育たないという、とてもデリケートな花です。しかもそうした条件が整っても、花が咲くまでには7~8年もかかります。昔は、山に当たり前のように咲いていましたが、年々姿が消えてしまいました。自然破壊が進んだことや、かつては薪や炭の材料をとるために間伐していた森が放置され、荒れたことが原因と言われています。

 何とかして裏山のササユリを増やせないものかと思案していたところ、新聞の地元欄に「“ササユリの里”が見頃を迎えた」という記事が載っていました。さっそくみんなで行ってみることにしました。

 健康フレンドから車を走らせ、30分ほどで到着。ワクワクしながら車を降りると、そこは太平洋に面した丘陵地で、潮風が頬をなでます。“ササユリの里”に一歩足を踏み入れると、光が射し込んでいる林の斜面にたくさんのササユリが一斉に咲いていて、まるで私たちを出迎えてくれているようでした。「わあ~きれい。こんなに咲いているのを見たのは初めて!」みんな思わず感動の声をあげました。10分足らずで1周できるほどの場所に白やピンク色のササユリが点在し、それを一つ一つ丁寧に見て歩きました。ササユリを保護するために柵をつけたり、自由に散策できるように小道を整備してあって、大切に育てられているのがうかがえました。

 “ササユリの里” は、十数年前に地元の有志たちが保存会を立ち上げ保護しています。生態がまだよくわかっていないため、新聞や文献から情報を集めたり、専門家に学んだりしながら試行錯誤を繰り返して少しずつ増やしてきたとか。そうした地道な努力が実って、昨年あたりから花がたくさん咲くようになったとのことです。

 “ササユリの里”から戻ってきた私たちは、その足で裏山の群生地に直行。適度に湿り気のある明るい南斜面は、“ササユリの里”にそっくりです。「ひょっとしたら、私たちの裏山が第二の“ササユリの里”になるかもしれない」そんな予感で、みんなの期待は大きく膨らみました。

 初夏になると登山道のわきに可憐で清楚なササユリがたくさん咲き、訪れる登山者の心を癒してくれるようになることを夢見ています。