牛乳が危ない!

“牛乳”というと、カルシウム不足を補うものとして真っ先に挙げられる食品です。多くの人が、「牛乳を飲めばカルシウムが摂れ、骨が丈夫になる」と考えているのではないでしょうか。健康番組を見ていると今でも、骨粗しょう症予防に牛乳を勧めている医師や栄養士がほとんどですから、無理もありません。
しかし実際には、牛乳や乳製品の摂りすぎがかえって骨を弱らせたり、ガンやアレルギーなどの一因になっていることが明らかになっています。私たちも、皆さんに牛乳や乳製品の摂取を控えるように勧めています。
今年2月、国際疫学ジャーナル誌に、牛乳摂取と女性の乳がんに関する驚くべき研究結果が発表されました。今回は、それを少しご紹介したいと思います。

今年、米カルフォルニア州のロマ・リンダ大学のアドベンティスト・ヘルスサイエンスセンターから、乳製品の摂取と乳がんリスクとの関連性についての研究結果が発表されました。研究内容は、北米に住むガンに罹患していない女性52795人(平均年齢57.1歳)を対象にした食物摂取頻度調査によるもので、乳がんの家族歴や身体活動・アルコール摂取・ホルモンや薬物摂取・乳がん検査・出産歴・婦人科的事項歴など、8年にわたって追跡調査が行われました。その間、1057人の女性に乳がんが見つかりました。

調査の結果、牛乳を飲まない人に比べ、牛乳(*低脂肪乳及び高脂肪乳を含む)を1日に1/4~1/3カップ摂取する人は、乳がんのリスクが30%増加。1日に1カップ摂取する人は、乳がんのリスクが50%増加。1日に2~3カップ摂取する人は、乳がんのリスクが70~80%増加することが明らかになりました。また、豆乳の摂取と乳がんリスクとの関連性、ヨーグルトやチーズの摂取と乳がんリスクとの関連性は認められませんでした。

この結果によって、牛乳を毎日飲むことで女性の乳がんリスクが大幅に高まる可能性があること、牛乳を豆乳に替えることで乳がんリスクが低減する可能性があることが示されました。研究者は、今回の研究結果から、1日3カップの牛乳を推奨している現在の米国の食事ガイドラインを慎重にみるべきであると述べています。

日本ではいまだに“牛乳信仰”が根強く、1日1カップの牛乳摂取が推奨されています。毎日牛乳を飲んでいる女性の方は、今述べた研究結果に驚かれたのではないでしょうか。私たちも、女性の間で増え続けている乳がんの要因の一つに、牛乳・乳製品の摂りすぎを挙げていますが、ここまで乳がんリスクが上がることに驚きました。しかも、日本人と違って昔から牛乳を飲んでいた米国の女性に、こうした高い数字が現れたのです。
今年発表された厚生労働省の「最新がん統計」によると、昨年の日本女性の乳がんによる死亡者数は約14800人(前年は約14500人)、死亡率は23.4%(人口10万人対、前年は23.0%)で、いずれも前年より増加していました。また、日本人女性が生涯で乳がんに罹患する確率は10.6%、つまり9人に1人は乳がんに罹っているということ。この数字にも、びっくりです。
以前も述べましたが、今の医学は予防より治療を優先し、早期発見・早期治療という流れをつくり出しています。しかし、これではいつまでたっても乳がん患者を減らすことはできません。早期発見・早期治療より大切なことは、予防をすることです。予防をしないで検診や治療に頼るのは、本末転倒です。
今回の研究結果は、乳がんを発症させる要因の一つに牛乳摂取があることを、はっきりと示しています。牛乳の摂取を減らすことで、乳がんのリスクを下げることができるのです。

そもそも、牛乳は母牛が子牛に与えるもので、人間が飲むためのものではありません。しかも、その子牛も生後半年もすれば乳を必要としなくなります。さらに現代の酪農では、虐待に近いような形で乳牛を育てています。そうした牛の乳を飲むことが「自然の摂理」に合っているとはとても思えません。

戦後、日本政府は国民に「牛乳は健康にいい」「骨が丈夫になる」「背が伸びる」といった言葉で牛乳の摂取を勧めてきました。残念ながら、今もそれは続いています。しかし、牛乳・乳製品を摂り続けてきたことによる弊害は、確実に現れています。肉・牛乳・油を中心とした“食の欧米化”によって、ガンをはじめとするさまざまな生活習慣病が急増してしまいました。今回は乳がんについて取り上げましたが、牛乳・乳製品の摂りすぎが大腸がん・前立腺がん・子宮がん・肺がんや、その他の生活習慣病の一因になっているのです。
私たちは、人々が一日も早く“牛乳信仰”を脱却し、牛乳・乳製品に頼らない健全な食事に切り替えていくようになることを心から願っています。

味覚が健康を左右する

 皆さんは、“脂肪味”という味覚があることをご存知でしょうか? 2018年、九州大学の研究グループによって、舌の中に脂肪酸の味を脳に伝える神経があることが発見されました。

  “味覚”というと、これまで甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の5つが知られていますが、今回、6番目の味覚として“脂肪味”が加えられました。脂肪味の感度を上げることで、肥満や生活習慣病の予防につながるとして注目されています。昨年、NHKの番組『クローズアップ現代+』でこれについて取り上げていたので、皆さんの中にもご覧になった方がいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、味覚ついて少し述べてみたいと思います。

 私たちは食べ物を口にすると瞬時にその物の味を感知しますが、そのメカニズムは舌の“()((みらい)”にあります。舌にある味蕾細胞が甘味や酸味といった味をキャッチし、その情報が神経線維に伝えられ脳に送られることで味を認識します。脳はそれをもとに消化器官に準備を促すように指令を出します。

 例えば、甘いものを食べると味蕾からその味が脳に伝えられ、脳は血糖値が急激に上がらないように膵臓からインシュリンを出すように促します。このように“味蕾”は、どんな食べ物が体に入ってきたかを最初に感知し、脳に伝えるという重要な役目を果たしています。

 ところが、味覚の感度には個人差があり、敏感な人もいれば、鈍感な人もいます。よく味付けの濃いものばかり食べていると“塩味”に鈍感になると言われますが、継続して摂ることでその味に慣れ、味覚がマヒしてしまいます。

 それは、新たに発見された“脂肪味”についても言えます。揚げ物や肉・スナック菓子など脂っこい食品を継続して摂ることで、脂肪味が鈍感になってしまいます。味覚が健全であれば少しの脂(あぶら)()で満足しますが、鈍感になると満足せず、次々と食べてしまいます。また、脂を常に摂っていると他の5つの味覚も鈍感になり、生活習慣病のリスクを高めることになります。

 番組では、20代から50代の男女30人を対象に“脂肪味”の感度を調査していました。濃度の違うオレイン酸入りの溶液を用意し、脂に対する感度を判定。すると、その中の10人が鈍感になっていることが判明しました。なんと3人に1人は、気づかないうちに脂肪味が鈍くなっていたのです。

 皆さんの脂肪味は、どうでしょうか? セルフチェックをしてみてください。以下の項目の中で2つ以上当てはまると、鈍感になっている可能性があります(*『クローズアップ現代+』より)。

 皆さんは、いかがでしたでしょうか。「ひょっとして鈍感になっているかも……」と思われた方がいらっしゃるかもしれません。でも、大丈夫です。味覚は今からでも改善することができます。味をキャッチする味蕾は、10日ほどで生まれ変わります。正しい食事に切り替えれば、味覚の感度はすぐにアップします。揚げ物をできるだけ減らし、肉を魚に替え、野菜たっぷりの食事にするだけで、敏感な味蕾に生まれ変わります。

 下記は、私たちがお勧めしている正しい食事の10のポイントです。

 こうしたことを心がければ味覚は健全になり、“本当のおいしさ”を味わうことができるようになります。グルメ番組ではよく、レポーターが脂ぎった肉やこってりしたラーメンを食べては「おいしい!」と叫んでいますが、実はそれこそが“味覚異常”。間違った食事が味覚を鈍感にすることで、それをおいしいと感じてしまうのです。

 人間の身体は本来、健康にプラスになるものを“おいしい”と感じるようにつくられています。しかし、脂肪を摂り続けていると味覚がマヒし、健康的な食事を“まずい”と感じてしまうようになります。そのため不自然な食事を好んで摂るようになるのです。

 皆さんには、健全な食生活を実践し、毎日を生き生きと送っていただきたいと願っています。

 先月の豪雨は、九州や山形など各地に甚大な被害をもたらしました。猛暑と新型コロナウイルスの中、多くの方々が厳しい生活を強いられていることを思うと、本当に胸が痛みます。被災された方々が、一日も早く安定した生活を取り戻すことができるよう、スタッフ一同、心よりお祈りしております。