

先月、新聞に「新潟県三条市が、今年12月から来年3月までの4ヶ月間、市内の全小・中学校で給食の牛乳中止を試行する」という記事が載っていました。“牛乳は学校給食の定番”という常識を覆すこの決定は全国的にも珍しく、ニュースやワイドショーなどでも取り上げられました。
戦後、食糧難の時代に児童生徒の栄養不足を補うために始まった学校給食ですが、開始以来、時代が変わり献立は変わっても、牛乳(当初は脱脂粉乳)がメニューから外されることはありませんでした。「給食に牛乳はつきもの」 大半の国民はそう思ってきました。それが突然、このニュースが流れ「えっ、本当にいいの?」と、思われた方も多いのではないでしょうか。
こうした三条市の牛乳中止の試みに対して、全国の学校給食関係者や栄養士の間にも波紋が広がっています。今回は、三条市の“取り組み”と“牛乳”について少し取り上げてみたいと思います。

新聞によると、三条市は牛乳をやめる理由として次の4つを挙げています。
1.米飯に合わない。
2.牛乳以外の食材を工夫すれば栄養を補える。
3.ご飯や魚などのおかずの量を増やしたい。
4.消費税増税でも給食費を据え置きたい。
三条市では数年前から“食育”に力を入れており、2008年度からは完全米飯給食を実施し、児童たちに大好評。それにともない 「和食中心の献立に牛乳は合わない」という意見が出るようになったとのこと。また、和食が無形文化遺産に登録されたことや、4月からの消費税増税が牛乳中止の後押しになったと言います。他にも、寒い時期に牛乳を残す子供が多いのも問題だったようです。
実は、牛乳中止を先頭に立って推し進めたのは国定市長。市長の本当の狙いは、大人たちの食生活の乱れを正すことにありました。市長は「日本人が長年築いてきたご飯中心の食生活が乱れ、パンや麺を主食にする機会が多くなったことが偏った栄養素の摂取につながり、多くの生活習慣病の要因になっている。これを根底から変えるには、子供の頃からご飯中心の食生活を身に付けてもらう以外にないと考えた」と語っています。
一方で牛乳は子供たちに根強い支持があり、「なくなると栄養が心配 という声が上がっているのも事実のようです。それに対して市長は、子供たちに「牛乳は家で自由に飲んでね」と答えているとか。
三条市では、今後の牛乳の扱いについては子供たちの反応や食べ残しの量を調べた上で、今年中に決める方針とのこと。はたしてどんな結果が出るのでしょうか、私たちも注目していきたいと思っています。

三条市の取り組みに対し、真っ向から反対しているのは全国の管理栄養士などでつくる「日本栄養士会」。同名誉会長の中村丁次氏は 「これまで牛乳は日本人の体力、体位の向上に大きく役立ってきた。牛乳にはビタミンC・鉄 ・食物繊維以外のほぼすべてが含まれている。牛乳をやめれば、カルシウムなどのミネラルやビタミンAなどの栄養素が欠乏し始めるだろう。実際、給食のない日は児童生徒のカルシウム摂取量が基準量より3~5割不足しているとの調査もある。給食で牛乳を出している今でも基準量を満たしていないのに、やめればもっと不足し、骨粗しょう症など将来の健康への影響も心配される」とのコメントを出しています。

一方、牛乳中止に賛成しているのは「学校給食と子どもの健康を考える会」の代表であり、管理栄養士の幕内秀夫氏。幕内氏は 「牛乳が健康にいい“完全栄養食品”という神話に誰も疑問を持たず、半世紀もまかり通ってきた」 と指摘。さらに「学校給食ではカルシウムだけでなくタンパク質や鉄・食物繊維など他の栄養素も足りていない。給食は全食事の17%程度で、残りの83%は家庭での食事。全体の17%にすぎない食事で、カルシウムの過不足を議論することがおかしい。そもそも摂取基準を守ろうと栄養士が栄養素の計算をすることが、“ご飯とさんまの塩焼きに牛乳”という変な献立の一因になっている。日本は今や世界に誇る長寿国で、それを支えているのは伝統的な日本食とも言える。給食では中途半端な栄養素の数合わせをするのではなく、日本の食文化を守るような献立を考えるべきだ」と述べています。
皆さんは、どう思われるでしょうか。

牛乳はこれまで、肉や卵と並んで栄養価の高い優れた食品と言われてきました。「カルシウムを摂るなら、まず牛乳!」というほどに、家庭でも学校でも牛乳を飲むことが勧められてきました。ほとんどの日本人が今でも、「牛乳を飲めば健康になる」「骨が丈夫になる」「背が高くなる」 と信じ込んでいます。医者は骨粗しょう症予防に必ず牛乳を勧めていますし、栄養士は成長期の子供たちの健康に牛乳は欠かせないと強調していますから、そう思うのも無理はありません。
ところが、「牛乳を飲むことは健康にプラスになるどころか、かえって深刻な弊害を引き起こす」と主張する研究者がいます。牛乳を飲んでたくさんカルシウムを摂っていると思っていても、体内で吸収される量には限りがあります。牛乳はカルシウムの吸収率が良い食品とされていますが、そのためかえって一度に多量の牛乳を飲むと、急激に血液中のカルシウム濃度が高まります。そして体内では血液中のカルシウム濃度を一定の割合に保つために、カルシウムの排泄作用が促進されるようになります。急いで排泄しないと、さまざまな障害が生じるようになるからです。カルシウムが排泄されるのと同時に、マグネシウム・亜鉛・鉄などのミネラルや、他の栄養素も失われてしまいます。その結果、さらにミネラル不足が進むことになります。
特に深刻なのはマグネシウムの欠乏です。マグネシウムが不足していると、いくらカルシウムがあっても骨の代謝はスムーズに行われません。骨粗しょう症予防に牛乳を飲んでも、かえって骨の弱化を招いてしまうのです。それだけでなく、マグネシウム不足は細胞全体・身体全体の機能低下を引き起こす引き金にもなります。
実際、世界で最も牛乳の摂取量が多いノルウェー人の骨折率は、日本人の5倍というデータもありますし、アメリカでは妊婦や骨粗しょう症の患者に牛乳を勧めないと言いますから、驚きです。カルシウムの吸収率が良いということは、人体にとって必ずしもプラスにはなっていないということです。
また、牛乳・乳製品の摂り過ぎが大腸ガン・ 乳ガン・子宮ガンの一因になっているという説は今や常識となりつつあり、欧米の医学関係者も牛乳や乳製品を摂らないように警告しています。

さらに牛乳の中に含まれているタンパク質が、アレルギー反応を引き起こすことも明らかになっています。アレルギー・アトピーの治療では、牛乳や乳製品を断つのは常識的なことで、牛乳をやめるだけで大きく改善されるケースがよくあります。


実はカルシウムは、牛乳よりも穀類や豆類・野菜・海藻・ゴマなどに多く含まれています。カルシウムの量で言うと100gあたり、乾燥ヒジキは牛乳の14倍、ワカメは7倍、ゴマは10倍、小魚・煮干しは22倍も含まれています。これらの食品には、カルシウムだけでなく骨の形成に必要な他のミネラルやビタミンも含まれていますし、食物繊維も豊富に含まれているためゆっくりと吸収され、効率よく体内で利用されることになります。伝統的食材を上手に組み合わせた日本食を摂れば、牛乳に頼らなくてもカルシウムは十分カバーできるのです。
三条市では、栄養を損なわないようにシラスふりかけやゴマの回数を増やしたり、煮干しの粉をみそ汁にたっぷり入れたりと、カルシウムを補う献立の研究を進めるとか。牛乳に頼った献立より、はるかにバランスの良いおいしい食事になるのではないでしょうか。
私たちは、三条市の取り組みにエールを送りたいと思います。今や、週3回“米飯給食”を実施している学校が9割を超えていると言います。子供たちの健康を守るために “牛乳中止” に賛同する自治体が現れ、一日も早く“牛乳信仰”が崩れる日がくることを心から願っています。
