

今年の2月末、厚生労働省から「平成22年都道府県別平均寿命」の順位が発表されました。それによると、長野県が男女とも長寿第1位(男子80.8歳、女子87.18歳)に輝き、一躍脚光を浴びることとなりました。長野県民にとってはもちろんのこと、私たちにとっても長野県には登山で何度も訪れているので、自分のことのように嬉しいニュースでした。
しかし、長野県以上に注目されたのは沖縄県。昨年まで30年間もの長きにわたって首位を保ってきた女子が3位に転落し、男子も25位から30位へと後退したことが話題になりました。3月5日のNHKの“クローズアップ現代”では、「沖縄 長寿崩壊の危機 ~日本に迫る “短命化社会” ~ 」と題して、沖縄県が抱えている問題について取り上げていました。皆さんの中にも、ご覧になった方がいらしたのではないでしょうか。

沖縄と言えば、誰もが「コバルトブルーの海に囲まれた長寿の島」というイメージを持っています。沖縄がまだ男女ともに1位だった10年前、琉球大学の鈴木信(まこと)教授は『オキナワプログラム』という本の中で、「沖縄の食生活やライフスタイルを見習えば長生きできる」と述べています。それがわずか10年で長寿神話は覆されてしまったのです。
番組では、長寿の島にいったい何が起きたのかを詳しく検証していました。それによると、高齢者は元気な人が多いのに、働き盛りの40代~60代の死亡率が高くなっていることが判明。その一番の原因として、油・脂肪の取り過ぎによる肥満者の増加を挙げていました。特に若い世代に肥満が増え、2人に1人が肥満だとか。高脂肪の食生活が肥満者を産み、早すぎる死を招いてしまっていると言うのです。まさに“逆さ仏” 現象が広がってきています。そして、「それはもう沖縄にかぎったことではなく、10~20年後には短命化が日本全体に起ってくる可能性がある」と警告していました。

戦後、アメリカ軍の占領下にあった沖縄では、それまでの伝統的な食文化が一変することになりました。いわゆる「食の欧米化」と呼ばれる現象です。沖縄にはもともと豚肉を食べる習慣はあったものの、特別な日のご馳走としてたまに食べる程度。それも調理できないのは“爪”と“鳴き声”というくらい、一切ゴミを出すことなく有効活用してきたと言います。しかも健康のことを考え、手間ひまかけて脂を取り除いてから食べてきたのです。それがアメリカから肉の加工品や小麦が輸入されるようになり、これまで主食はイモ類や雑穀だったのが白米やパンに変わり、チャンプルーやタコライス・スパムを使った沖縄独特の肉料理が多く摂られるようになりました。また、日本で初めてファーストフードレストラン“A&W”がオープン、これは本土より10年も早かったそうです。そんな食生活にどっぷりと漬かって育った世代が、平均寿命をどんどん下げていくことになってしまいました。

困ったことに、高脂肪の食事には麻薬やアルコールとよく似た中毒性があり、欲求を抑えられなくなることがアメリカの研究によって明らかにされています。ついつい食べ過ぎてしまうのは、そのせいなのだとか。麻薬やアルコールは取り締まることができても、食事はそういうわけにはいきません。それが高脂肪食の恐ろしい点で、人類にとって“100年の大問題”とまで言われています。肥満が深刻なアメリカでは、テレビのCMで高脂肪・高カロリーの食品を控えるよう注意を呼びかけています。
一方、日本では健康ブームと言いながら、テレビでは相変わらずグルメ料理の紹介や大食いなどの番組が頻繁に放映されています。昨年の12月には厚生労働省から「10年前より魚・野菜の摂取量が減少する一方で、肉類は増加し“肉食化”が進んでいる」という発表がありました。残念なことですが、“長寿国日本”は確実に“短命化社会”に向かっていると言えるようです。

かつての長寿県としての栄光を取り戻そうと、沖縄県では健康増進を目標に、地域ぐるみで丹念な個別指導を開始しました。ボランティアが地域住民を健康診断に誘い、肥満の人には保健師が個別に指導をするといった活動を展開し、徐々に糖尿病患者が少なくなってきたと言います。一人一人を指導するのは手間のかかることですが、一番確実な方法です。また、琉球大学の指導を受けて伝統食のメニューを作り、学校給食で子供たちにそのおいしさを伝えています。そして子供たちが家に帰って伝統食について話すことで、今度は食事に対する親の認識が変わってきているそうです。もしかしたら将来には、食卓が“伝統食”で賑わう日がくるようになるかもしれません。

一方、1位の座に輝いた長野県ですが、かつては漬物や塩漬にした魚や信州みそなど“塩分”の摂り過ぎが原因で脳卒中の死亡率が急上昇、昭和40年には全国第1位になったこともありました。そこで県をあげての取り組みを開始。まず“塩分Gメン”と呼ばれる「食生活改善推進員」が家庭を1軒ずつ訪問して塩分量をチェック!「味噌汁は1日1杯で具だくさん」、「漬物は1日小皿1杯」と具体的に指導しました。減塩運動が盛んな時に若かった世代が、今の長寿に貢献していると言います。

また、30年ほど前には、「ぴんぴん元気に長生きし、病気をせずにころりと死ぬ」という意味の“ぴんぴんころり”という言葉が生まれました。佐久市には“ぴんころ地蔵”が建立され、なんと1年間に10万人もの参拝者が訪れるというのですから驚きです。さらに“ぴんころ御膳”を考案し、「1食を600~700キロカロリーに、塩分は1日に3~4グラム、地元で取れる食材を使用する」 この3点を厳格に守る料理教室を開いて普及に努めているそうです。

今回発表された長寿ランキングは、沖縄県の首位転落によって、ほとんどの日本人が毎日食べている“欧米型の食事”がいかに短命化を招いているかを実証していました。さらに、長野県のような県民あげての地道な活動が確実に長寿につながっていることも示していました。おそらく、多くの人たちが食事改善の必要性を実感したのではないでしょうか。皆さんの中にも、「よし、食事改善をしてみよう!」と決心した方がいらしたのではないかと思います。

そうした方たちに以前からご紹介しているのが、「ホリスティック健康学・栄養学研究所」提唱の「食事改善の10のポイント」です。これはかつての伝統的な日本食と長寿村の食事をモデルにし、さらに最新の栄養学の知識を取り入れた“新しい伝統食”を作るためのポイントです。これに従って実践していただけば、沖縄や長野で勧められている食生活改善を上まわる成果が得られるものと思います。