

7月1日、厚生労働省は食中毒のおそれがあるとして、牛の“生レバー”の提供を禁止し、焼肉店やレストランから“レバ刺し”が姿を消しました。同日、アメリカ・カリフォルニア州では、全米初の“フォアグラ”の生産・販売を禁止する法律が施行されました。これらの販売禁止は、理由はともあれベジタリアンの私たちにとって嬉しいニュースでした。
今回は、偶然にも同じ日に禁止になった“生レバー(レバ刺し)”と“フォアグラ”について取り上げてみたいと思います。

皆さんもご覧になったことと思いますが、「“レバ刺し” 禁止」が発表されたとき、ニュースやワイドショーでは「一大事!」とばかり、連日のように焼肉店の様子を放映していました。店内は、禁止を受けてあわてて駆け込んだ客でいっぱい。若い女性客やサラリーマンが「大好きな“レバ刺し”がもう食べられなくなるなんて悲しい!」と嘆いていたのが印象的でした。 “レバ刺し”を食べたことのない私たちにはピンとこない話題でしたが、その人気の高さには驚きました。
皮肉なことにお客さんの中には「もうこれが最後……」と、別れを惜しんで食べた挙句、食中毒で病院に担ぎ込まれた人が何人かいたようです。まさに“命がけ”、なんとも気の毒としか言いようがありませんが、亡くなった方がいなかったのはせめてもの幸いです。

“フォアグラ”はキャビア ・トリュフと並ぶ「世界三大珍味」ガチョウや鴨に必要以上に餌を与えて、人工的に作り出した脂肪肝です。日本ではフランス料理の花形的存在ですから、皆さんの中にも、結婚式やパーティーなどで食べたことがあるという方がいらっしゃるのではないでしょうか。
古くから、“フォアグラ”はヨーロッパの多くの国々で生産されていました。しかし「不自然な食材」として否定的な見方も根強く、1999年、欧州評議会(ヨーロッパの統合に取り組む国際機関)は「農業目的で保持される動物の保護に関する欧州条約」で、すでに定着している場合を除き、フォアグラの生産を禁止しました。現在は、総生産量の80%がフランスで生産されています。
その飼育方法は、ガチョウの口にポンプをくわえさせ、餌を無理やり詰め込み強制的に肥満状態にせさるという、“残酷”としか言いようのないものです。
しかし、フランス国民議会は 「“フォアグラ”は保護すべきフランス文化であり、フランス料理の貴重な遺産である」として強制肥育を擁護しています。また、生産を禁止している国でも、ほとんどの国が販売までは禁止しておらず、フランスなどから輸入して食べているのですから、矛盾を感じずにはいられません。

カリフォルニア州で施行された今回の法案は8年前の2004年9月、かのシュワルツネッガー州知事の時代に成立し、2012年に禁止することがすでに決まっていたものです。違反すれば一日あたり1000ドルの罰金が科せられるとのこと。
実は、2006年にもイリノイ州のシカゴ市議会で“フォアグラ”の販売禁止が決定していました。ところが、地元レストランのシェフたちが猛反対。市長までもが「フォアグラを禁止するなんて、シカゴ市を世界中の笑いものにするようなものだ!」と発言し、制定後わずか2年でお払い箱になったという事例があります。

そして今、カリフォルニア州でも、施行からまだ1ヶ月しかたっていないというのに、法律を無視してレストランで“フォアグラ”を出したり、シェフの団体が州を相手取って禁止法の差し止めを求めたりする動きが起こっているとか。8年間の猶予期間を無事に切り抜け、やっと施行にこぎつけたというのに……。今後の成り行きが気になるところです。

日本の“レバ刺し騒動”は沈静化し、それに代わって“レバ刺し風こんにゃく”が登場して早くも大人気とか。この風潮に企業が即座に対応して、新しい商品をヒットさせるのですから、日本人の器用さには驚かされます。
一方、“フォアグラ”の問題は深刻です。「動物虐待」 の観点から生産・販売を禁止する運動が広がっている反面、生産は年々増え続けています。“フォアグラ”はまさに“人間のエゴ” 動物を虐待してまでも食べたいという“ゲテモノ好き”の人間が作り出したものにすぎません。とても「食文化」などと言えるものではありません。美食(?)を追い求める人間の心が変わらないかぎり、こうした動物虐待の問題は解決されないのではないでしょうか。
私たちは、カリフォルニア州に続く賢明な都市がもっと増えていくことを心から願っています。