人工甘味料

 ここ数年、砂糖の摂りすぎを気にしたり、減量をするために“カロリーオフ”や“ゼロカロリー”の食品を選ぶ人が増えています。こうした商品には、砂糖の代わりに“人工甘味料”が使われています。

 人工甘味料は、砂糖やアミノ酸を原料に化学的に合成され、甘さは砂糖の数百倍もありますが、カロリーはゼロかきわめて低く、血糖値には影響しないとされています。しかし近年の研究で、人工甘味料にはさまざまなリスクがともなうことが明らかになってきました。

 今回は、低カロリー志向の高まりで盛んに使われるようになった“人工甘味料”について、取り上げてみたいと思います。  

 アメリカの栄養学会「ニュートリション2025」で発表された研究で、人工甘味料を使った飲料と糖尿病の発症には相関関係があることが分かりました。この研究は30年にわたって行われ、人工甘味料の“サッカリン”(※一時、発がん性が疑われ使用禁止になりましたが、現在では認可されています)を使ったダイエット飲料などを定期的に飲んでいた人は、ほとんど飲まなかった人に比べて、糖尿病を発症するリスクが2倍高くなることが分かりました。

 また、フランス国立保健医学研究所が、人工甘味料入りの炭酸飲料を1週間に500mℓ以上摂っている人は、糖尿病のリスクが15%、1500mℓ以上摂っている人は59%上昇したという研究結果を報告しています。

 人工甘味料は、炭酸飲料・スポーツドリンク・缶コーヒー・ノンアルコールビールなど、さまざまな飲み物に使われています。運動の後や暑い季節には、スポーツドリンクがよく飲まれますが、飲み続けると大量の人工甘味料も一緒に摂ることになり、糖尿病のリスクを高めることになってしまいます。

 2025年3月、人工甘味料の“スクラロース”についての研究が、世界的な学術誌『ネイチャー・メタボリズム』に掲載されました。その内容は「スクラロースが脳を混乱させて、誤った空腹信号を出す」というショッキングなものでした。

 スクラロースは、ゼロカロリーで砂糖の600倍もの甘さがあります。その甘さに脳が刺激され、糖分がないのにインスリンを分泌して血糖値を下げようとします。そのため体は低血糖の状態になり、脳が「もっと食べるように!」という誤った信号を出してしまいます。自然界には存在しない強烈な甘さが脳を混乱させて、低血糖を招いてしまうのです。

 WHO(世界保健機構)では、これまで砂糖の大量摂取が肥満や糖尿病・心筋梗塞などのリスクを高めるとして、砂糖から人工甘味料への置き換えを奨励してきました。ところが欧米でのさまざまな研究から、人工甘味料に多くの健康リスクがあることが分かり、2023年5月にガイドラインを変更しました。

 WHOは、「人工甘味料を長期間摂取した場合、体脂肪を減らす効果がないうえに、糖尿病の発症リスクが20~30%、脳卒中が19%、心血管疾患全体では32%の増加が見られる」という分析結果を公表しました。そして「減量をする目的や、がん・心疾患などの生活習慣病を予防するために、人工甘味料を使わないように」という勧告を出しました。

 また、同じ年の7月には、WHO傘下の国際がん研究機関(IARC)が、人工甘味料の“アスパルテーム”に肝臓がん・乳がん・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫と関連する可能性があることを報告しています。人工甘味料には、こうしたさまざまなリスクがあることが分かっていながら、WHOはなぜ人工甘味料を使用禁止にしないのでしょうか……。

 人工甘味料は少量でも強い甘さがあり、砂糖を使うより安価なことから、清涼飲料水や菓子類・調味料などに幅広く使われています。日本では、現在6種類の人工甘味料が認可されていて、それぞれ使用基準が決められ、表示が義務づけられています。食品表示に “アスパルテーム” “アセスルファムK(カリウム)” “サッカリン” “スクラロース” “ネオテーム” “アドバンテーム”と表記されています。皆さんが日頃何げなく摂っている食品の中に、もしかすると人工甘味料が含まれているかもしれません。これを機会に、食品表示を確認してみてください。

 ここ数年、砂糖の代わりに人工甘味料を使った商品が“カロリーオフ”の名のもとに、まるで“健康の味方”のように宣伝されています。ところが実際は、その多くが商品のコストダウンのために使われているのです。人工甘味料は、健康には程遠い代物なのです。

 糖質制限やカロリーオフだけを目指しても、健康になれるわけではありません。飽食の現代社会に生きる私たちが健康を手にするためには、毎日の食生活を健全なものにする努力と、人工甘味料のような不自然な添加物を避けることが必要になります。

 皆さんが、氾濫する健康情報に惑わされることなく、本物の健康を手にされることを願っています。

炭水化物抜きで不健康

 以前、スタッフだよりで ‟糖質制限(炭水化物抜き)ダイエット”の危険性についてお伝えしました。最近では、炭水化物抜きダイエットが倦怠感や筋肉量の減少を引き起こすことが問題になっています。一方で、「ご飯を食べると太ったり、血糖値が上がる」という理由で、相変わらず炭水化物を控えている人もいます。

 そこで今回は、現代人にとって健康の大敵になってしまった“炭水化物”について、少し取り上げてみたいと思います。

 炭水化物は、タンパク質・脂質と並ぶ3大栄養素です。それぞれエネルギー源になることから ‟エネルギー産生栄養素”とも呼ばれます。タンパク質は筋肉や骨をつくる主成分で、脂質は血管や細胞膜をつくる材料になります。炭水化物の主な役割は、生命維持に必要なエネルギーをつくることです。

 炭水化物に含まれる糖質は、体内でブドウ糖に分解されて脳や神経・赤血球などのエネルギー源になります。特に脳は、ブドウ糖を唯一のエネルギー源にしています。

 ダイエットで 炭水化物を抜くと、体は必要なエネルギーをタンパク質や脂質からつくることになり、それぞれの役割が後回しになっていきます。

 栄養生理学・食品科学を専門とする笠岡誠一氏は、著書『9割の人が間違っている炭水化物の摂り方』の中で、現代の日本人は炭水化物を摂らないことで「栄養素の摂取バランスが崩れて、危機的なエネルギー不足に陥っている」と警告しています。

 炭水化物は、糖質と食物繊維からできています。糖質はエネルギー源になり、食物繊維は腸内環境を整え、糖尿病や肥満を予防する働きがあります。

 食物繊維というと、ほとんどの人が山盛りの野菜サラダを思い浮かべるのではないでしょうか。前述した笠岡氏は、食物繊維をたくさん摂るなら「1日3食、お皿いっぱいのグリーンサラダを食べる」より「1日3食、ご飯を食べること」と述べています。実は日本人が摂っている食物繊維の10%が米(ご飯)に由来していて、すべての食品の中で一番多くを占めています。

 日本人の食物繊維の摂取量は年々減少していて、現在では1日14gほどで、厚生労働省が推奨する1日21gの摂取量を大きく下回っています。日本人の食生活が欧米化し、昔のようにご飯を食べなくなったことが大きな原因になっています。

 日本人は昔から、米などの炭水化物を主食にしてきました。近年の研究で、炭水化物が日本人の体に適した食べ物であることが分りました。その1つが、日本人の腸には ‟ブラウティア菌”という腸内細菌が多いことです。ブラウティア菌は、炭水化物をエサにして ‟短鎖脂肪酸”をつくります。短鎖脂肪酸には「免疫バリア機能の強化」「インスリン分泌の促進」「肥満予防」などの働きがあります。

 さらに、炭水化物をあまり摂らない民族に比べて、日本人の唾液には ‟アミラーゼ遺伝子”が多いことも分かりました。唾液に含まれるアミラーゼ遺伝子が多いほど、炭水化物を分解しやすく、スムーズに利用できます。日本人が伝統的に炭水化物を多く摂ってきたことで、炭水化物を利用しやすい体になったと言われています。

 “日本食が健康によい”ことが認識され、世界中で日本食ブームが起こり、豆腐や納豆を摂る人が増えています。ところが日本では、伝統食からどんどん遠ざかり、その結果、食物繊維不足や摂取エネルギー量の減少という深刻な状況になっています。欧米型に偏った食事は「高タンパク・高脂肪」「砂糖過剰」「ビタミン・ミネラル不足」「低食物繊維」を招き、健康レベルを低下させてガンや心臓病・脳卒中などの現代病の原因になっています。

 私たちが提唱している「新・伝統食」の主食は、5分づき米に数種類の雑穀を加えた ‟雑穀入り5分づきご飯”と豆類です。副食は、たっぷりの野菜・海藻類と少量の魚介類です。まさに、炭水化物抜きの食事とは正反対の食生活です。

 以前、お客さまから「“雑穀入り5分づきご飯”が美味しくて、ついおかわりしてしまいます」という嬉しいお便りをいただきました。私たちスタッフも毎日、雑穀ご飯の美味しさを噛みしめています。こうした食生活を続けてきたおかげで、今では皆、体調が良くなったことを実感しています。

 年を重ねても生き生きと健康に過ごすために、皆さんも毎日の食事を伝統的な日本食に変えてみてください。少しずつ体調の変化を感じていただけることと思います。