ガンの新薬が国を滅ぼす?

 4月末、産経新聞に衝撃的な内容の記事が掲載されました。『「薬価」の危機-迫られる選択』と題して、「高額な新薬が国の医療費を跳ね上げ、財政危機を招きかねない」というのです。新薬の開発によって画期的な薬が続々と登場して医療費を圧迫、限られた財政の中で何を選び何を捨てるのか、早急な国の対策と国民の選択が迫られています。
 今回は、この記事を少しご紹介したいと思います。

 記事によると4月4日、霞が関財務省会議室で財政制度等審議会が行われ、そこで日本赤十字社医療センター化学療法科の国頭英夫部長が、「国家の存亡」について熱弁をふるったとのこと。この日のテーマは「ガン治療のコスト」、国頭氏はガン治療薬“オプジーボ(一般名ニボルマブ)”を挙げ、「この1剤を契機にして、国が滅びかねない」と、危機感をあらわにしました。
 “オプジーボ”は、小野薬品工業が平成26年にメラノーマ(悪性黒色腫)の治療薬として製造販売の承認を取得。昨年12月には、切除不能な進行・再発の非小細胞肺ガンの治療にも追加承認されました。これまでの抗ガン剤と大きく作用が異なり、患者自身の免疫に働きかけてガンを抑えるという、日本初の画期的な免疫療法薬です。しかも効果持続期間が長く、他のガンへの適応拡大も期待されています。ただし、投与を受けた患者の全員に効果が表れるのではなく、臨床試験での有効は約2割、重い副作用が出ることもあります。また、どの患者に効果があるかを事前に見極めることができず、投与後の効果を早い段階で判断するのが難しいという欠点もあります。

 問題なのはその価格、体重60kgの患者が1年間(26回)オプジーボを使うと、なんと3500万円もかかります。患者の自己負担は「高額医療制度」があるため月8万円程度で済み、残りは患者が加入している医療保険と国や自治体の公費で賄われます。
 オプジーボが適用される非小細胞肺ガンの患者は年10万人強、仮に5万人がオプジーボを1年間使うとすると、薬代だけで1兆7500億円かかります。現在の日本の年間医療費は約40兆円で、そのうち約10兆円を薬剤費が占めていますから、それが2割近く跳ね上がる計算です。薬剤費の約4分の1は国費で賄われているため、国頭氏は「このままだと国が滅びかねない」と指摘し、価格の値下げや使用制限など対策の必要性を訴えています。

 昨年末、処方薬や治療の価格を決める国の会議(中央社会保険医療協議会)で、こうした事態を回避するために大量に販売されている薬の価格を引き下げるルールが決まりました。今年4月からそのルールが適用されるようになり、今年度は約280億円の国費の節約が可能となり、医療費全体の削減効果は1000億円以上にのぼると言われています。また、厚生労働省は今年度から試行的に、オプジーボなどの高額な治療薬について、薬の費用が効果に見合っているかどうかの検証を始めるそうです。
 ガンの先進治療が高額なのは知っていましたが、こんなにも高い薬があることにビックリ! これでは「国を滅ぼしかねない」という危惧も頷けます。消費増税が延期され、財源の増加が断たれた今、“国民皆保険制度”を維持していくために何をどうするのか、国と製薬会社の攻防はますますヒートアップしていきそうです。

 一方、医師や患者側にも、こうした薬を使うかどうかの選択が迫られます。その一つとして、日本尊厳死協会副理事長の長尾和宏医師は、治療には“やめどき”があることを述べています。長尾氏は「高血圧、糖尿病、認知症……、さまざまな薬にはやめどきがある。しかし、今の医療は走るばかりで、止まらない車みたいだ」と現在のあり方を批判し、医療の受け方や日本人の死生観を見直すべきだと提言しています。
 医師も患者も、治療に真剣であればあるほど、できることはすべてやろうと考えます。「正しい死生観」がないために「死は医学の敗北」と考え、少しでも患者を生き永らえさせる医療が施されています。“やめどき”が語られないまま、医療費は右肩上がりを続けています。

 長尾氏は、人生と同様に治療にも引き際が大切で、「やめどきは哲学に近く、患者の生き方や状態で変わってくる。その主導権は医者にあると医師も患者も思い込んでいるが、患者の人生という物語の中で、両者が対話しながら決めていくべきではないか」と述べています。

 私たちも本当にそう思います。命が大切なことは間違いありませんが、こんなにも高価な薬を使ってわずかばかりの延命をすることに、どれほどの価値があるのか疑問です。重要なのは  「限りある時間をどう生き、どう医療と関わり、“死”と向き合っていくか」ということだと思います。患者や医師はもちろんのこと、日本人一人一人が「正しい死生観」を持ってこそ、最適な医療が施されていくのではないでしょうか。

 「死は不幸ではない」  こう言うと、おそらく反感を抱く方がいらっしゃるものと思います。今この時もガンに苦しみ、高額であっても新薬にすがりたいと考えている患者さんや、1日でも長く生きていてほしいと願って延命治療を施している家族の方々にとっては、死は不幸以外の何物でもないかもしれません。
 多くの人は死を恐れ、死を悼み、死について口にすることをタブーとしています。特に子供や若者の死は、最大の不幸であると考えています。しかし“死”は、遅かれ早かれ誰にでも必ず訪れるものであり、避けることはできません。人間だけでなくすべての生き物は、生まれたときから“死”に向かって歩んでいるとも言えます。

 新薬の問題を取り上げた『週刊新潮』の中で、曽野綾子さんが 「死ねないのは現世で最高の不幸です。人間の救いは死ねるってことで、永遠に死ねないという刑罰があったら最高刑ですよね」と話されていました。

 私たちも、死は決して不幸なことではないと考えています。むしろ、肉体の重さや痛みから解放される喜ばしい出来事、地上人生を精いっぱい歩んだことに対するご褒美であると思っています。以前も述べましたが、私たちは「死後の世界(霊界)」があることを信じています。そしてそこは、今生活している地上よりもずっと素晴らしい所であると理解していますので、死を恐れることはありません。

 ですから、もし私たちがガンになっても、効くかどうかわからない薬を使って国に大きな負担をかけるようなことは望みません。また、摘出手術や抗ガン剤治療、管に繋がれた延命治療も受けないと決めています。自分に死が訪れたなら、穏やかな気持ちであの世に旅立ちたいと願っています。

 皆さんは、この問題についてどう思われるでしょうか。

健康の基準が変わる⁉

 先月、健康診査や人間ドックで「異常あり」とされる基準が大幅に緩和されるかもしれないという、驚きのニュースが報じられました。日本人間ドック学会と健康保険組合連合会(健保連)が共同で研究を行い、従来の健康基準を塗りかえる“新基準値”を公表しました。
 今、この新基準をめぐって医学界や製薬会社はもちろんのこと、これまで医者の言うことを信じて薬を飲み続けてきた人たちの間にも「何を信じてよいのか分からない!」といった、大混乱が巻き起こっています。今回はこの“新基準”について少し取り上げてみたいと思います。

 健康診査や人間ドックを受けると、大半の人々は自分の検査結果が基準の範囲に収まっているかどうかが、まず気になります。ところがこの“基準値”、一律に決まっているものではありません。メタボ検診と言われる特定健康診査では、血圧やコレステロール値などの基準値が定められていますが、人間ドックや企業の健康診査では、人間ドック学会が示している数値を使ったり、各施設が独自に基準値を決めています。しかも基準はどんどん厳しくなり、そのせいで「病人」とされる患者が急増し、医療費もうなぎ上り。そこで、この研究がスタートしました。
 調査は、平成23年に人間ドックを受けた約150万人の中から、厳しい基準(喫煙をしていない、過去に大きな病気をしていない、飲酒は1日1合未満など)をもとに、きわめて健康な男女約1万~1.5万人を選出。血圧やBMI(肥満度)や血中コレステロールなど27項目の検査データを解析し、新たな健康基準値を導き出しました。
  その数値の一部は、次のようなものです。

 数値を見ていただくと分かるように、血圧・総コレステロール・LDL(悪玉)コレステロール値が大幅に緩和されています。“血圧”は、現在正常とされる数値は上(収縮期血圧)が129まで、下(拡張期血圧)が84までですが、新基準では上が147まで、下が94までとなります。また、健康番組でよく取り上げられる“悪玉コレステロール”については特に差が大きく、男女とも119以下が正常とされていますが、男性は178以下、女性は年齢を3段階に分け、30~44歳で152以下、45~64歳で183以下、65~80歳では190以下となっています。
 あまりにも大幅な緩和に、皆さんも驚かれたのではないでしょうか。「高血圧は悪い、悪玉コレステロールは健康に害をもたらす」というこれまでの常識を揺るがしかねない数値に、多くの患者や医療業界、製薬業界に大パニックが起きています。
 高血圧と診断され、長年薬を飲み続けている患者からは「自分は本当に病気なのか健康なのか、訳が分からない。今さら薬をやめることは怖くてできないし、どうしたらいいのだろう?」という不安の声。また患者はそっちのけで、医学界でも意見は真っ二つに割れて「大ゲンカ」になっているとか。

 現行の基準を定めた「日本高血圧学会」や各分野の専門学会は、新基準に大反発しています。医師の中には「人間ドック学会が出した数字は全くのデタラメ。もし患者さんが、この数字を信じて病気が悪化したり、亡くなったりしたらどう責任を取るつもりなのか」と反論。
 一方、新基準を高く評価する医師もいます。厳しい基準で病人を見つけては薬漬けにしている医療に対し、「薬で無理に血圧やコレステロールを下げる必要は全くなく、その副作用の方が問題である」と述べています。
 そもそも人間は年齢を重ねると血管が硬くなり、その分、血液を身体の隅々まで送るために自然と血圧を上げていると言われています。それに血圧は、ストレスや運動、環境などでも簡単に変動してしまいます。なかには「高血圧の目安は『年齢プラス90が基本』、この数字に10%をプラスしても、まだ誤差の範囲である」と主張する医師もいるほど。

 私たちも、全く同感です。長寿村では、血圧が180~200のお年寄りがざらにいると言いますから、少しくらい高くても何の問題もないということです。それよりも、降圧剤を飲んでいる患者が脳梗塞になる確率は約2倍にのぼるという調査結果が報告されているように、薬による副作用の方が大問題だと思います。

 これほど大きく緩和されると、「これまでの基準はいったい何だったのかしら?」と思われる方も多いのではないでしょうか。新基準を見ると、改めて従来の基準のずさんさに気がつきます。年齢はおろか、性別さえ分かれていない項目が大半。血気盛んな20歳の男性と、80歳を過ぎた女性が同じ基準で判断されるというのは、あまりにも不自然としか言いようがありません。
 しかも、これは世界の基準から見てもかなり厳しいもので、例えばアメリカ政府の委員会が決めた高血圧の基準は60歳代で上が150。LDLコレステロールについては、欧米では190以上を「異常」としています。
 では、なぜ日本はこんなにも厳しい基準なのでしょうか。以前“スタッフだより”で、健康診査について語っている医師 “近藤誠” 氏の「予防医療センターは結局、“患者を呼ぼうセンター”ですよ。これがけっこう儲かるんです」という言葉を紹介しましたが、基準を厳しくすればするほど患者は増え、薬の売り上げも急増し、医療業界全体が潤うという構図があるのです。現に、「要治療」とされる受診者が20年で、なんと10倍に増えていると言います。
 これが新基準になると、かなりの「病人」が「健康体」に変わります。 過去の調査によると、30~80歳の男女で血圧の上が130以上の人は全体の約30%。それが新基準の148以上になると、約8%に減少。現在の30~80歳の人口から考えると、高血圧の病人が、なんと1800万人も減る計算になるのだとか。また、悪玉コレステロールでは、30~80歳の男性でみると、従来の基準では全体の約52%の人が引っかかってしまいますが、新基準になると、たったの約4%だそうです。

 こんなにも「病人」が減るのですから、医療業界や製薬業界が黙っていられるわけがありません。人間ドック学会では、早ければ来年4月から基準値が変わる可能性があるとしていますが、はたしていつから導入されるのでしょうか……。

 このように健康の基準がガラッと変わると、「健康とは何だろう?」と、考える人も多いのではないかと思います。健康は人間にとって切実な願いであり、どんなにお金を積んでも買うことはできません。誰もが、年齢を重ねるごとに健康のありがたさを実感し、「できれば一生健康でいたい、寝たきりの状態にはなりたくない」と願います。しかしそれとは裏腹に、病気と無縁のまま一生を終える人は、きわめて限られています。
  私たちが提唱しているホリスティック医学に基づく「ホリスティック健康学」では — 健康とは、人間を構成している“霊”と“精神 (心)”と“肉体”がすべて健全な状態にあることとし、健康であるためには、その3次元に対するトータル的なアプローチが必要であると説いています。それが「健全な心」「正しい食生活」「適度な運動」「十分な休養」です。私たちは、人間が健康になるためには、現在のような薬に頼る医療ではなく、この“4つの柱”が最も重要と考えています。これらを同時に徹底して高めていくことで、健康レベルが上がっていきます。私たちが正しい食事に心がけているのも、また筋トレや登山に励んでいるのも、この“4つの柱”を充実させるためです。そしてそれ以上に大切なのは、正しい価値観や人生観、心の持ち方や生き方であると考えています。純粋に「人のために役に立ちたい」という心こそが生きる原動力となり、健康を手にするための最大の秘訣だと思っています。
  私たちは、病気の早期発見のために健康診査や人間ドックを受けることより、“4つの柱”「健全な心」「正しい食生活」「適度な運動」「十分な休養」を高めていく努力の方がはるかに大切であると考えます。国民全体がそうした健康になる生き方を優先するようになれば、日本はもっと健全な国家になるのではないでしょうか。