


以前“スタッフだより”で、“ビートルズ”の元メンバー、ポール・マッカートニー氏が「週1日は肉を食べない日(Meat free Monday)を設けるキャンペーン」を開始したことについて取り上げました。
彼の提唱は世界中に広がり、肉食をやめてベジタリアン(菜食主義者)に転向する人が確実に増えつつあります。特に猛烈な勢いでその数を増やしているのがアメリカです。肉を主食とするアメリカでは、つい20年前まで“ベジタリアン”というだけで“変人”扱いされていました。ところが驚いたことに、今ではもう立派に市民権を得ているのです。
今回は世界をリードするアメリカのこうした新しい動きについて取り上げてみたいと思います。

ここ数年、アメリカの首都ワシントンDCやニューヨーク・サンフランシスコなどの大都市をはじめ多くの州や市が、公式に「肉なし月曜日」の導入を宣言しています。

ベジタリアン専門のレストランが次々にオープンし、どの店も大盛況。普通のレストランでもお客さんの3分の1はベジタリアン・メニューを注文すると言います。レストランだけでなく企業の社員食堂や大学の学生食堂にも、たいていベジタリアン・メニューが用意されていて、今や最も人気の高いメニューになっています。
ミシガン州では、知事みずから「肉なしデー(Meat out day)」を宣言し、州民に「月曜日に限らず常にベジタリアンの食生活をするように」と呼びかけています。
最近の調査によれば、「肉なしデー」を週2回実施している家庭が全体の50%以上にのぼり、週4回以上の家庭が20%に達しているとか。こうした動きは全米に広がり、ベジタリアン人口は毎週2万人ずつ増え続けているというのですから、あまりの変わりように、ただただビックリです。もはや“ベジタリアンの食事”は一時の流行ではなく、最も新しい食事習慣としてすっかり、アメリカ社会に定着しています。

では、なぜアメリカで急速に 「肉食離れ」 現象が進み、ベジタリアンが爆発的に増えたのでしょうか?主な理由として次の3点が挙げられます。
1.肉食は「健康に悪い」
アメリカの“二大死因”はガンと心臓病です。その元凶が「動物性食品の過剰摂取」 にあることが何千もの栄養学・医学の研究で証明されています。ベジタリアンは血中コレステロール値と血圧がともに低く、心臓発作は肉食者の10分の1以下、ガンはわずか4分の1という結果が出ています。そのほか脳卒中・高血圧症・糖尿病などの病気になる率も、かなり低いのです。
2.肉食は「地球環境破壊につながる」
今日の地球温暖化の大きな原因は、牛が吐き出すメタンガスや豚の排泄物から放出されるアンモニアによる大気汚染だと言われています。それによって生じる酸性雨や大量の農薬使用による河川・湖沼の汚染が大きな環境問題となっています。また、熱帯雨林を牧場化するための破壊が信じられないようなスピードで進んでいます。
3.肉食は「動物愛護の精神に反する」
食用として飼われている牛・豚・鶏たちは皆、狭くて不潔な環境の中に押し込められ、抗生物質やホルモン剤入りの飼料で育てられ殺されていく運命にあります。そうした事実が明らかになるにつれて、動物愛護の精神からそれに反対する人たちが増えてきました。アメリカ国内の肉消費量が10%減れば、10億匹の動物の命が救われると言われています。
昨年は日本でも、牛や豚の“口蹄疫”が大流行しました。そして年明け早々には“鳥インフルエンザ”が発生し大騒ぎになっています。処分された何十万頭もの牛・豚・鶏のことを思うと、本当に胸が痛みます。感染を防ぐためとはいえ、病気に罹っていない動物まで殺す……これはまさに集団虐殺(ジェノサイド)ではないでしょうか。連日、殺処分に関するニュースがテレビで報じられましたが、「肉食」に反対するコメンテーターや評論家は誰一人としていませんでした。私たちには、それが不思議でなりません。「動物がかわいそう」と言う一方で、焼肉やフライドチキンをおいしそうに食べている人々 残念ながらこれが現実です。

ぶ厚いステーキとビッグサイズのハンバーガーに象徴される“経済大国”アメリカは、これまで世界中に「最悪の食事(欧米食)」を広めてきました。しかし、その結果皮肉にも、20歳以上の成人の3分の1が肥満で、ガンの死亡率が世界一高く、人口の13人に1人が糖尿病という“超病気大国”になってしまいました。それらの病気による医療費の増加は常に物価の上昇を上回り、40年間でGDP(国内総生産)に占める医療費の割合は約3倍にも増加し、経済破綻寸前にまで追い詰められました。そこに至ってやっと「肉食の害」に気がつき、国を挙げて「肉食をやめて、ベジタリアンの食事にチェンジしよう!」と真剣に食事改善に取り組むようになったのです。日本ではあまり知られていませんが、間違いなく今、新しい旋風が巻き起こっています。
戦後、日本人は欧米の食事をまねて「肉食」を取り入れ、今では大半の人が毎日のように肉を食べています。ファミリーレストランのメニューやコンビ二の弁当には肉が入っているのが当たり前で、肉を使っていないメニューは人気がありません。
肉食が、ガンや生活習慣病の原因となっていることがハッキリしているにもかかわらず、テレビの健康番組で「老人の健康のためには“肉”が必要」などと間違ったことを言う研究者がいて、「肉なんか食べたくない」という高齢者に、無理に肉を勧めています。また、牛丼チェーン店同士の安売り競争がニュースになるなど、まだまだ肉食に歯止めをかけるような動きは見られません。日本ではいまだに“ベジタリアン”というと、数十年前のアメリカのように変人扱いされています。


しかし、アメリカと同じような動きは、いずれ必ず日本にも起こってきます。ついこの間まで堂々と“タバコ”を吸っていた人が、今では相当肩身の狭い立場へと追いやられているのと同様に、肉食を続けている人が、「まだ肉なんか食べているの?」などと言われる日がくるのも、そう遠いことではないかもしれません。