マイオカイン

 今年開催された ‟パリ・オリンピック” では、メダルを賭けた熱戦に日本中の人が声援を送りました。また、アメリカMLB(メジャーリーグベースボール)の大谷選手の活躍に、野球ファンだけでなく多くの人がテレビに釘付けになりました。最新の研究で、スポーツ観戦に幸福感や活力を高める効果があることが明らかになりました。

 スポーツ庁が昨年行った「運動・スポーツ実施率」の世論調査では、20歳以上の人で週に1日以上「運動やスポーツを行った」人は全体の52%、その理由として「健康のため」と答えた人が最も多く、次いで「体力の増進や維持のため」「運動不足を感じるから」となっていました。多くの人が ‟運動は体に良い” と考えていることが分かります。

 運動が健康に及ぼすメカニズムが、さまざまな研究から明らかになってきました。その中で注目されているのが、筋肉から分泌される ‟マイオカイン” という生理活性物質です。マイオカインは筋肉が伸び縮みすることで、筋繊維から分泌してホルモンのように働き、臓器や組織とコミニュケーションをとって機能を調整します。マイオカインは現在100種類以上が発見され、脳の神経細胞を活性化して認知機能を高めたり、大腸に働いてガン細胞を攻撃したり、動脈に作用して動脈硬化を予防するなど、30種類ほどの働きが確認されています。

 マイオカインは筋肉を動かすことで分泌しますが、筋肉を動かさないと逆に筋肉の萎縮や骨の破壊を促す ‟悪玉のマイオカイン” が出て、筋肉の質や量を低下させ肥満や肌の衰えが進みます。加齢によっても悪玉のマイオカインは増加していきます。悪玉のマイオカインの影響を抑えるための最善の方法は、筋肉量の多い太ももやふくらはぎを使って、しっかりと運動をして ‟善玉のマイオカイン” の分泌量を増やすことです。健康を手にするためには、やはり運動は欠かせません。

 私たちは ‟いつも、元気で生き生き” をモットーに、生涯現役を目指しています。スタッフの多くは前期高齢者の仲間入りをしていますので、健康のために日々の運動は欠かせません。仕事の合間を見つけて、裏山でウォーキングをしたり、皆で筋トレやヨガを続けています。筋トレやヨガといっても、私たちがやっているのは簡単なものばかり。スクワットや上体そらし、腕立て伏せ、ヨガでは猫のポーズやバッタのポーズ、コブラのポーズといった背筋や腹筋を意識したものを組み合わせています。それは、いつまでも若々しく、‟美しい姿勢” を保つためです。

 筋トレをした後は、体が軽くなったように感じます。今では体幹が安定して、前かがみになりがちだった姿勢が少しずつ改善してきました。続けてきた効果は絶大です!これからも、皆で実年齢を感じさせない ‟美しい姿勢” を保つために、ウォーキングや筋トレを続けていきたいと思います。

 筋肉はいくつになっても鍛えることができ、また鍛えることで全身の劣化や老化を遅らせることができます。日々の運動は、最高の万能薬、優れた予防法です。皆さんもぜひ、日々の生活にウォーキングや筋トレを取り入れてみてください。 

 皆さんが、いつまでも健康で若々しく、充実した人生を歩んでいかれることを願っています。

最強の寝たきり予防法

 2030年には、日本は3人に1人が65歳以上になるという“超高齢社会”を迎えます。「年をとっても元気でいたい。寝たきりや要介護の生活にはなりたくない!」というのが、多くの人の願いではないでしょうか。今、その願いを叶えるための新対策が世界中で発表され、注目を集めています。
 先月、NHKの健康番組“ガッテン!”で「筋肉&血管を強くする!世界が証明した“究極の寝たきり予防法”」と題して、最新の研究結果が紹介されました。私たちが提唱している“ホリスティック健康学”に通じる内容でしたので、今回はこの番組を簡単にご紹介したいと思います。

 番組では初めに、アメリカ・カリフォルニア大学で長生きの仕組みと要因を研究している“スティーブ・コール”教授の研究結果が取り上げられました。
 研究は、健康に問題のない160名を3つのグループに分け、次のことを毎日欠かさず行ってもらうというものです。

● 1つ目のグループは、友人の荷物を持ってあげるなど「人に親切にする」
● 2つ目のグル―プは、道端のゴミを拾うなど「世の中に役立つことをする」
● 3つ目のグループは、好きなものを食べるなど「自分が嬉しいと感じることをする」

 これを1カ月間継続し、詳しく血液検査をしたところ驚きの結果が生じました。あるグループにだけ、免疫系の遺伝子の働きに大きな変化が現れ、寝たきりを防ぐ最良の方法であることが判明しました。 
 皆さんは、どのグループだと思われますか?  正解は何と、1つ目の「人に親切にする」グループでした。このグループだけが、寝たきりにならないように遺伝子の働きがコントロールされていることが分かったのです。

 以前“スタッフだより”で、糖尿病や動脈硬化などさまざまな病気の原因に “慢性炎症” が大きく関わり、健康長寿にはその炎症を抑えることが重要であると述べました。コール教授の研究によって、人に親切にすることでこの炎症物質を出させる遺伝子があまり働かなくなり、炎症を抑えることが実証されました。しかも、このグループの人にだけ著しく炎症が減少し、「世の中に役立つことをする」グループの人には全く見られず、「自分が嬉しいと感じることをする」グループの人は炎症が増加していました。人に親切にしている人としていない人とでは、年間の死亡リスクが50%も違うそうです。
 この結果に対してコール教授は、それには人類の進化の歴史に答えがあるとし、「人間は他人に親切にすることで喜びを感じ、身体に良い反応をするようにプログラムされているのだと思う」と述べていました。

 日本でも、東京大学高齢社会総合研究機構の“飯島勝矢”教授によって、千葉県柏市に住む高齢者5万人を対象に、“運動”と“人とのつながり”による「寝たきりになる危険度調査」が行われました。その結果、「運動と人とのつながりの両方ともしていない人」の危険度が最も高く、それを基準にすると、「運動だけをしている人」の危険度は半分以下に、「人とのつながりだけをしている人」の危険度は8分の1に、「両方している人」の危険度は16分の1にまで減少することが判明。人とのつながりは、運動以上に重要であることが明らかになりました。飯島教授は「これほどまでに大きな違いが現れたことに驚いている」と述べていました。私たちも、この激減にはビックリ!

 番組では、そのいい例として1組のご夫婦を取り上げていました。ご主人は運動が大好きで1万歩のウォーキングが日課、奥さんは運動が苦手でピアノを弾いたり英語の詩を読むという文化系。2人の寝たきりになる危険度を調べたところ、ご主人の方が高いという結果が現れました。ご主人は、運動はしていても人とのつながりはほとんどなく、人との会話もあまりありませんでした。一方、奥さんは、運動はしていませんが友人たちとの茶話会やグループ活動に忙しくしていました。
 寝たきりの予防には、一人でしっかり運動するよりも、グループ活動に参加したり、グループでの運動の方がより効果的というわけです。

 さらに番組では、世界的にインパクトを与えたアメリカの研究結果が紹介されました。研究は世界中の148個の研究データ(対象者は約30万人)を再解析し、長生きにプラスに働く影響度について調査したものです。結果は、これまで長生きにプラスとなる要因とされてきた「禁煙」「酒を飲み過ぎない」「運動」「肥満予防」これらよりも「人とのつながり」の方がより長生きにプラスの影響を及ぼしていることが分かりました。
 「人とのつながり」つまり心の状態が、いかに健康に大きな影響を与えているかがよく示されています。

 今年1月、イギリスで“孤独担当大臣”が誕生しました。孤独はお年寄りだけでなく全世代にわたる深刻な問題とし、イギリス政府は数百万ポンド(数億円)を投じる予定だと言います。そのきっかけとなったのが、ロンドン大学で加齢研究をしている“アンドリュー・ステップトー”教授の研究です。
 研究は50才以上の男女6500人を対象に、「人とのつながり」を調べ7年間追跡。その結果、人とのつながりが少ない人ほど死亡率が高いことが判明しました。
 今イギリスでは「孤独撲滅キャンペーン」が展開され、人とのつながりの大切さを訴えるテレビCMが流れているそうです。

 番組の最後に、週に1回でも同居の家族以外の人とのつながりがあるだけで、身体の機能が衰えにくくなることを述べていました。
 皆さんは、どれだけ人とのつながりを持っていらっしゃるでしょうか。

 私たちが提唱している“ホリスティック健康学”でも、健康には心の要素がきわめて重要であるとしています。「心の健全さ(利他的な心)」は、健康をつくる4つの柱「心・食・運動・休養」の中で最も重要な要素です。心の健全さは、人と接する中で育まれるものです。人に親切にする・人に奉仕するといった利他愛の喜びから得られるものなのです。

 私たちもこうした最新の情報を知り、これからも人との触れ合いを求め、人の役に立つような歩みをしていきたいと改めて思いました。
 近年、日本でも高齢者の“孤独死”が問題視されています。国民的番組である“ガッテン!”で、人とつながること・人に親切にすることの重要性が述べられたことは、間違いなく訪れる超高齢社会をどう乗り切っていったらいいのか、そのヒントになったように思います。