短鎖脂肪酸

 人間の健康を考えたとき、腸内環境を整えることが重要です。先日、そうした腸内細菌についての新事実がテレビ番組で紹介されました。それが6月13日放送のNHKの番組『あしたが変わるトリセツショー 改訂版!腸内細菌のトリセツ』です。皆さんの中にも、ご覧になった方がいらっしゃるのではないでしょうか。

 今回は、この番組から腸内細菌と老化のメカニズムと、私たちが提唱している正しい食事のポイントについて、少しご紹介したいと思います。

 人間の大腸には、約500~1000種の腸内細菌が40兆個以上も生息していると言われ、それぞれの菌が、いろいろな働きをしています。よく知られているのが下痢や便秘の改善ですが、他にも美肌やがん予防・運動能力の向上など、中でも世界から注目を浴びているのが “老化防止” の働きです。

 では、私たちの大腸の中で何が起こっているのでしょうか。まず、腸内細菌のエサとなるのが “食物繊維” です。食物の栄養はそのほとんどが小腸で吸収され、食物繊維だけが大腸まで届き、腸内細菌のエサとなります。腸内では、細菌が食物繊維を食べて代謝物を出します。その代謝物を別の細菌が食べ、さらにその代謝物を別の細菌が食べるという、代謝物のリレーが行われています。その過程で生まれるのが “短鎖脂肪酸” です。この短鎖脂肪酸が、健康にとって重要な役割を担っていることが分かってきました。

 皆さんもご存知かと思いますが、健康を維持するためには免疫細胞の働きが欠かせません。実は大腸には、免疫細胞の7割が生息しています。免疫細胞は、病原体の悪さを食い止めるという重要な働きをしていますが、その免疫細胞に正しい指示を出すのがT細胞です。このT細胞をつくり出しているのが ”短鎖脂肪酸” なのです。短鎖脂肪酸が多ければ、しっかりとT細胞がつくられ、免疫細胞が正常に働きます。反対に少ないと、T細胞がつくられず、免疫細胞が暴走することで炎症が起こり、それが老化の原因の一つとなってしまいます。

 また短鎖脂肪酸には、腸内環境を整えたり、肥満の改善や血糖値の上昇を抑える働きなどがあることも分かってきました。つまり、健康と若さを手にするためには、腸内細菌によってつくられる短鎖脂肪酸が欠かせない、というわけです。その腸内細菌のエサとなるのが、“食物繊維” なのです。

 皆さんは毎日、食物繊維をしっかりと摂っているでしょうか。日本人の1日当たりの食物繊維の摂取量調査(*平成30年「国民健康・栄養調査」)によると、男性も女性も全世代で目標を下まわっていました。番組では、食物繊維量が書かれた食品カードを使って “育菌” を勧めていましたが、私たちが推奨している「正しい食事」と「メニューづくりのポイント」を実践すれば、食物繊維は十分に摂取できます。

 その正しい食事のポイントとは、次の10項目です。

  この中で食物繊維に関するものは、⑤⑥⑦⑨となります。

  そしてメニューづくりのポイントが、次の3つです。

 これらのポイントを守って食事をつくれば、食物繊維をたっぷりと摂ることができます。

 番組では、食物繊維を意識して摂るようにした人たちのほとんどが、2週間で短鎖脂肪酸の量が2倍以上になり、体調や肌ツヤが良くなったことを紹介していました。私たちも、健康を手にするためには、食物繊維を豊富に含む正しい食事が欠かせないことを実感しています。

 皆さんもぜひ、正しい食事を実践してみてください。きっと体調の変化を実感していただけるものと思います。皆さんが、いつまでも健康で若々しく、生き生きとした人生を歩んでいかれることを願っています。