ロシアのウクライナ侵略

 今年の2月、ロシアがウクライナに侵攻するという、戦争を知らない私たちにとって衝撃的な事件が起こりました。その日から連日、無残に破壊された建物やケガをした人々など、悲惨な状況が報じられています。言葉も分からない他国に避難したり、家や家族を失ったりしているウクライナの人々のことを思うと、胸が締め付けられます。戦争は、人々の心に大きな悲しみと憎しみしか生まない愚かな行為、摂理に反した行為であると、改めて強く感じました。そして未だに、武力によって他国を侵略する国があるという現実を、突き付けられた思いがしました。皆さんも、さまざまなことを感じていらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、ロシアとウクライナの戦争について少し述べてみたいと思います。

 今回の戦争では、何と言っても“ゼレンスキー大統領”の「絶対にロシアには屈しない。ウクライナの自由を守るために戦い抜く!」という強い意志とリーダーシップが光っています。ゼレンスキー大統領と言えば、決まってカーキ色のTシャツ姿で登場し、世界中の人々を惹きつけています。このスタイルは、彼が戦場で戦う兵士たちとの絆を大切にしているからだそうですが、そこから「絶対に負けない!」という固い決意が伝わってきます。彼の姿勢がウクライナ国民だけでなく世界中の国々を動かし、今や軍事支援国は欧州やアメリカをはじめ、47か国に上っています。日本も財政支援や人道支援などを行っています。

 こうした有事の際には、ゼレンスキー大統領のような強いリーダーシップと、それに応える国民の高い意識が何よりも重要であることを世界中の人々に示しました。それにしても、ゼレンスキー大統領と比べると、日本の首相や政治家が頼りなく見えてしまうのは、私たちだけでしょうか……。

 ロシアによる一方的な侵攻を見て、多くの方が「これは他人(ひと)ごとではない」と感じられたものと思います。日本は中国・北朝鮮・ロシアと隣接していて、特に中国の領海侵犯は年々エスカレートしています。中国は台湾や尖閣諸島を虎視眈々と狙っていて、この戦争の行方を注視しています。その意味で、この戦争は日本にとって、とても重要と言えます。

 少し前になりますが、元駐米大使の加藤良三氏が、産経新聞(6月15日版)の“正論”欄で『自助努力こそ安全保障の要諦だ』と題して、次のように述べていました。「今後、日本の安全を確保する主役はまず日本であり、日本の自助努力があって日米安保の実効性、信頼性が増す。逆にそれ以外の(みち)がないというのが世界の常識であることを肝に銘ずべきときである。」

私たちも、全く同感です。以前にも述べましたが、日本も他の先進国のように、“国家と国民は自分たちの力で守る”という当たり前のことができる国にならなければならないと思います。防衛力の強化という自助努力をしてこそ、日本の安全が守られるのではないでしょうか。

 また加藤氏は、有事の際にアメリカ軍と自衛隊に頼るという他者依存では平和は保てないとし、日本を守るためには全国民が身を挺して戦う気概が必要であることを示唆していました。私たちも、今の日本人を見ているとあまりにも平和ボケしていて、もし中国が攻めてきたら、大半の人が何の抵抗もせずに白旗を挙げるのではないかと心配になります。

 先日、産経新聞に“世界価値観調査(2017~2020年)”に関する興味深い記事が載っていました。この調査は、世界100か国近くの社会学者によって行われているもので、それによると、「もし戦争になった場合、あなたは国のために戦いますか?」との問いに、日本は「はい」と答えた人の比率が13.2%でした。この数字は、なんと世界79か国中最下位、ダントツの低さです。その理由は、有事の際には単純にアメリカ軍が守ってくれると考えている人や、日本が戦争に巻き込まれることなど想像すらできない人が多いからではないでしょうか。それに比べてウクライナの比率は56.9%、今ではごく普通の人が「ロシアの奴隷にはならない。ウクライナのために戦う」と、当たり前のように語っています。

 私たちも加藤氏が述べているように、国民が身を挺して戦う気概があってこそ、日本の平和は守られるものと考えています。この戦争を機に、「自分の国は自分たちで守る」という意識が日本人の間に高まるようになることを願っています。皆さんは、どのように思われるでしょうか。

 ロシアがウクライナに侵攻してから半年になりますが、戦争が終結する兆しは一向に見られません。一刻も早くウクライナの人々に平和が訪れるように心から祈っています。