クローンビジネス

 皆さんは、“クローンビジネス”という言葉をご存じでしょうか? 「亡くなったペットともう一度会いたい!」という飼い主の願いを受けて、今、各国にクローン犬やクローン猫をつくり出して販売するクローンビジネスが広がっています。世界の市場規模は5年間で4倍に増加し、中でも最も大きく成長しているのが中国です。中国は今、空前のペットブームに沸いていると言います。今回は、そうしたクローンビジネスの現状を取り上げたNHKの番組『もう一度ペットに会いたい~世界に広がるクローンビジネス~』を少しご紹介し、私たちの考えを述べてみたいと思います。

 皆さんの中には、“クローン”と聞くと、1996年にイギリスで初めて誕生した羊の“ドリー”を思い浮かべる方がいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、クローン技術はその後どんどん進化し、2年後には日本でクローン牛、2003年にはイタリアでクローン馬、2005年には韓国でクローン犬、2018年には中国でクローン猿が誕生しています。そうした技術を活用したのが、“クローンビジネス”です。

 クローンビジネスが世界に先駆けて始まったのはアメリカ。2002年創立の“ヴァイアジェン社”では、犬や猫だけでなく馬のクローンにも力を入れ、これまでに1000頭以上のクローン馬をつくり出し、世界一のシェアを誇っています。また、韓国では国がクローン技術を活用し、麻薬探知犬や人命救助犬・軍用犬・警察犬などをつくり出し、すでにさまざまな場で活躍しているというから、驚きです。

 番組では、中国で2018年にビジネスを始めた“シノジーン社”を主に取り上げていました。シノジーン社は、ペットブームの中、「亡くなったペットにもう一度会いたい」という飼い主の要望に応えて、ペットそっくりのクローンをつくって販売しています。これまでに約300匹の犬や猫のクローンをつくり出しています。値段は動物によって異なり、猫は約300万円、犬は500万円と言われていますが、実際はそれ以上かかるようです。日本を含む世界各国から依頼がきているそうです。

 中国のクローンペットビジネスの市場規模は年々拡大し、2022年は約30億円、5年後の2027年にはその5倍、なんと約150億円に増えると予測されているとのこと。その金額に、唖然としてしまいます。

 では、ペットのクローンはどのようにしてつくられるのでしょうか。犬の場合について言うと、まず犬のクローンをつくるためには、他に代理で出産する母犬と、卵子を提供するメス犬が必要となります。元となる犬の皮膚の一部を切り採り、皮膚組織から細胞の核を取り出します。それを、あらかじめ核を取り除いた卵子に移植し、電気的な刺激を与えて細胞を融合し、培養します。それを代理母となる犬の子宮に入れて妊娠させます。出産は帝王切開が多く用いられます。成功する確率は2~3割で、着床しなかったり、流産や死産、また病気や障害を持って生まれることもあり、多くの犬が犠牲となります。1匹のクローン犬をつくり出すために、どれだけの犬が犠牲になっているのか、その実態は明らかにされていません。

 ペットのクローンについては、中国でさまざまな議論を呼んでいると言います。大半の人は倫理的・道徳的観点から反対していますが、中には「愛するペットを亡くした時の悲しみを思うと、よく分からない」と言う人もいます。

 私たちも、もちろんペットのクローンには大反対です。クローンビジネスだけでなく、動物のクローンをつくること自体が「自然の摂理に反した間違った行為」であると考えているからです。生命はすべて神のものであり、どんな理由であっても、人間の都合で操作することは許されるものではないと思っています。しかし、どの国でも動物のクローンに対する規制がないのが、現状なのです。

 「愛するペットにもう一度会いたい!」という飼い主の気持ちは、私たちにもよく分かります。しかし、他の動物を犠牲にしてまで実現させようとする行為は、“エゴ”としか言いようがありません。ましてや、そうした思いに付け込んで金儲けをしてよいはずがありません。人間の欲望を増幅させるクローンビジネスが、今後ますます拡大していくのかと思うと、本当に暗澹とした気持ちになります。

 番組の中で、ユネスコ生命倫理プログラム専門官の方が、次のように述べていました。—「(クローンは)動物の種全体に関わる変革になってしまうかもしれない。それは、非常に大きな責任をともなうものではないかと思う。“生命って何なの”という問いを突きつけられると思います」

 私たちも、自然の摂理に反した間違った行為は、いずれ必ず人間に返ってくるのではないかと思っています。一刻も早く動物のクローン化が規制され、こうしたビジネスがなくなっていくことを心から願います。

 ちなみに、以前スタッフだよりで、「地上で築いた愛の絆は決して消えることはなく、霊界に行けば必ず愛する人と再会することができるようになる」と述べましたが、実は動物との間にも同じことが言えるのです。地上時代に愛情を注いでいた犬や猫などのペットとも、死後、再会することができるようになります。私たちは、愛するペットを亡くして悲しんでいる方を見るたびに、「霊界で必ず再会することができますから、その日を楽しみにしていてください」と、心の中で語りかけています。

 世界では今、ロシアがウクライナに侵攻し、甚大な被害をもたらしています。連日報道されているウクライナの実状は、戦争の悲惨さを物語っています。無残に破壊された街並みを見るたびに胸が締め付けられる思いになります。多くの方々と同じように私たちも、一日も早くウクライナの人々に平和が訪れることを心から祈っています。