納豆パワーに再注目

 先日、朝日テレビの番組『たけしの健康エンターテインメント! みんなの家庭の医学2時間スペシャル』で、「納豆と骨粗しょう症の関係」について取り上げていました。番組では、納豆に含まれるビタミンKが骨粗しょう症の予防・改善に有効であるという研究結果をもとに、普段から納豆をたくさん食べている女性たちの血液中のビタミンKの量を測定。その中に医者も驚くほどの数値を出した人がいたことから、ビタミンKが豊富な納豆をたくさん摂れば骨は丈夫になると結論づけていました。番組をご覧になった皆さんの中には、「もっと納豆を食べなくては……」と思われた方がいらしたのではないでしょうか。

 “納豆” と言えば、以前は「臭~い」と敬遠する人が多くいましたが、今では学校給食で使われたり、ス―パーの納豆売場にはいろいろな納豆がところ狭しと並べられ、人気の商品となっています。
 私たちにとっても納豆は毎日の食事に欠かせない一品、冷蔵庫に必ず常備しています。お弁当にも持参し、ランチタイムにはスタッフがせっせと納豆をかき混ぜている光景が見られます。

 納豆の原料は言うまでもなく“大豆”ですが、大豆には牛肉並みのたんぱく質が含まれているところから “畑の肉” とも言われています。健康フレンドでは、豆類を食事全体の1割は摂ることを勧めています。しかし豆には消化吸収が悪いという欠点があり、人によっては食べ過ぎると腸内で異常発酵し、ガスがたまる原因になります。ところが発酵食品である納豆は、その欠点がみごとに解消され、消化吸収の良い“優れた大豆食品”になっています。
  納豆の効能は実に多く、脳梗塞・虚血性疾患・老人性痴呆症などの血栓疾患の予防、整腸作用・血圧降下・ダイエットなどが挙げられます。さらに、2006年にイギリスのエール大学で発表された研究論文では、骨粗しょう症の予防・改善に大きな効果があることが確認され、世界の医学界に衝撃を与えました。納豆に豊富に含まれるビタミンKがコラーゲンを増やして骨を強くするのです。大豆にはわずかしか含まれていないビタミンKが、納豆菌によって100倍以上も増加するというのですから驚きです。

 骨粗しょう症は50代以上の女性の4人に1人が患っているという、女性にとっては深刻な病気です。骨折をきっかけに寝たきりになってしまうこともしばしば。多くの人は骨粗しょう症の予防というと、牛乳やカルシウム剤の摂取を考えますが、カルシウムだけを大量に摂っても効果はほとんど期待できません。骨を強くするには、体内で骨とカルシウムを結合させるビタミンKなど他の栄養素が欠かせないからです。骨年齢を若く保つためには、ビタミンKを豊富に含んだ “納豆” が強い味方というわけです。
 納豆を毎日食べるだけで、中高年に多い血栓症や骨粗しょう症を防ぐことができるのですから、こんな嬉しい話はありません。

 そもそもあのネバネバ “納豆” は、いつ、どのようにしてできたのでしょうか。それにはさまざまな説があって定かではないようですが、一説には、番組でも紹介していたように、今から約900年以上前の平安時代に誕生したと伝えられています。
 当時の武将、源義家が京都から東北に向けて出兵する際、馬の飼料として煮豆をワラの袋に入れて持参しました。ところがその煮豆が長い道中でいつの間にか糸を引いてしまい、「さあ大変、豆を腐らせてしまった!」と慌てた家来が豆を捨てようとしていました。そこへ偶然、義家が通りかかり、その独特の風味に惹かれて恐る恐る口に含んでみたところ「これはおいしい!」と一言  こうして納豆が誕生したのだとか。
 納豆は、戦国時代には武将のたんぱく源やスタミナ源となり、江戸時代には江戸や京都で「納豆売り」が毎朝売り歩いていたという記述があります。戦時中は軍用食として用いられ、戦後は栄養失調の日本人を救う食品として食べられるようになり、しだいに日本中に普及していきました。そして今や、納豆は世界に誇る発酵食品として認められるようになり、アメリカをはじめ海外でも販売されています。

 私たちが子供の頃は、納豆と言えば“水戸納豆”で、ワラや経木(きょうぎ)で包んでいるものしかありませんでした。それが今では、紙のカップや発泡スチロールに入って、粒の大きさやたれの種類などさまざまなニーズに応えた納豆が売られています。スーパーに行くたびに新商品が登場していて、納豆も日々進化しているのを感じます。

 納豆は味噌 ・ しょう油と並ぶ優れた発酵食品で、納豆菌は私たちの健康にとって、さまざまな有益な働きをしてくれます。大豆に含まれているたんぱく質は、納豆菌の働きによってアミノ酸に分解されているため、実に消化吸収の良い“アミノ酸補給源”と言えます。しかしアミノ酸は、一度に大量に摂っても体内で長時間キープしておくことができないので、毎日こまめに摂ることがお勧めです。
 納豆は食べる直前に冷蔵庫から出すのではなく、寒い冬は前夜から、真夏でも20分ほど前には出しておくようにします。すると、納豆菌がグングン増殖してびっくりするほど柔らかくなり、粘りも増しておいしくなります。納豆菌が増えれば、それにつれてビタミンKも増加します。
 また、少量の油を一緒に摂ることでビタミンKの吸収が高まるので、私たちはオメガ3を豊富に含んだ“亜麻仁油”を少量垂らして食べています。納豆と亜麻仁油のコンビはピッタリ、感激するほどのおいしさです。

 納豆は味噌汁や漬物と同様、毎日食べても飽きのこない食品です。スタッフの中には  「納豆を毎日食べるようになったら、以前よりも健康になって更年期特有の症状もグ~ンと軽くなった」 と、喜んでいる者もいます。スタッフ全員で登山を楽しむことができるのも、“納豆”のおかげかもしれません。
 皆さんもぜひ、毎日の食卓に納豆を加えてみてください。きっと“納豆パワー”を実感されることでしょう。