NO.151
2020/1/30



 

昨年11月、NHKスペシャル 『食の起源     人類の進化が教える “理想の食”』 が放映され、シリーズの第1集は日本人の主食、“ご飯” について取り上げていました。皆さんの中にも、ご覧になった方が多いのではないでしょうか。
 ご飯と言うと、今では “太る” というイメージが強く、“糖質制限ダイエット” の流行から、ご飯を食べない人が増えています。そうした中、この番組は、人類の進化から糖質をしっかり摂ること、ご飯を食べることの重要性を示していました。番組を観た多くの方が、「これからはちゃんとご飯を食べよう!」 と思われたのではないでしょうか。そこで今回は、番組の内容を少しご紹介したいと思います。

 



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皆さんは、人類の祖先の主食が “肉” ではないことをご存知でしょうか。番組ではまず、人類の祖先の主食は何だったのかについて、人類の進化の過程を遡って説明していました。そして石器時代の遺跡の発掘調査から、人類の祖先はドングリなどの木の実や地下茎と言われる木の根など、でんぷんを多く含む食べ物を摂っていたことが判明しました。
  200万年前 (ホモ・エレクトスの時代) には火を使って木の実などが調理され、それによって祖先の体に大きな進化がもたらされるようになりました。木の実などのでんぷんが加熱によってブドウ糖に変化し、それが腸から脳へ送られることで神経細胞が増殖し、脳が巨大化したとのこと。

   
    これまで、人類の祖先の脳は肉の栄養分によって大きくなったと思われてきましたが、そうではなく、木の実などのでんぷんを常に加熱して食べたことでブドウ糖が豊富に摂れ、それで脳が大きくなった、というのが新しい説です。こうして人類は、さまざまな道具を生みだし、仲間との結束を強めて狩りができるようになったとのことです。人類の進化にとって糖質は、欠かせないものだったのです。  



   

       さらに、人類の食を大きく変えたのが、およそ1万年前に始まった “農耕” です。人類は農耕によって、糖質たっぷりの穀物を手にすることができるようになりました。日本でお米がつくられるようになったのは約3000年前、お米を主食にしたことで体がそれに対応し、私たちの祖先は太りにくい体質になったとのこと。  
   太りにくい体質について具体的に言えば、日本人は唾液の中に “アミラーゼ遺伝子” が多い、ということです。アミラーゼ遺伝子は、口の中ででんぷんを糖に分解するため、それが多い人ほどでんぷんをより早く糖に変えることができます。そのためインスリンの分泌量が抑えられ、肥満を抑制する効果があると言われています。
  驚いたことに、世界中のさまざまな民族のアミラーゼ遺伝子の数を調査したところ、日本をはじめ日頃からお米 (でんぷん) を多く摂っている民族は、あまり摂っていない民族に比べ、平均1.5倍もアミラーゼ遺伝子を持っていることが判明しました。お米を主食としてきたことが人体の遺伝子を変化させ、肥満や糖尿病になりにくい体質へと進化させてきたことが明らかになったのです。
  さらに、太りにくい体質には、腸内細菌が関係しています。腸内細菌の中の “プリボテラ菌”は、お米などの糖質を食べて “短鎖脂肪酸” という物質をつくり出します。短鎖脂肪酸は、脂肪の燃焼を促して肥満を予防したり、免疫の働きを良くして動脈硬化や糖尿病を防いだりします。プリボテラ菌は、欧米人にはあまり見られない菌ですが、お米を主食としている民族の腸内には、この菌が存在しています。
 
    例えば、今もお米をたくさん食べているラオスの村人での調査では、全腸内細菌の2割以上をプリボテラ菌が占めていました。また、日本人50名を対象とした調査では、全腸内細菌のおよそ7.5% を占めていました。
  このようにお米には、人間の体を健康で太りにくい体質に変えていくすごいパワーがあることが分かります。お米をたくさん食べてきた日本人をはじめアジアの国々の人々に肥満や糖尿病が少ないのは、こうした理由によるものです。
 



   

 

では、どのくらいお米 (糖質) を摂ればいいのでしょうか。最近の研究でそれが明らかになりました。先進国の約15000人のデータを分析し、糖質の摂取量と死亡率の関係を調査した結果、糖質の摂取量を減らすと、死亡率はそれに応じて上昇します。一方、摂取量が多過ぎても肥満や生活習慣病になり、死亡率が上がることが判明しました。最も死亡率が低かったのは、全摂取カロリーの5055% を糖質から摂っているケースでした。これはご飯にすると、毎食、茶碗1杯程度の量に相当します。
  今流行りの “糖質制限ダイエット” は、一時的にやる分には効果がありますが、長期間続けると深刻な事態を招くことになり、とても正しいダイエット法とは言えません。

 



     

    私たちも、主食として穀類をしっかり摂ることの大切さを訴えています。番組でも述べていましたが、お米には必須アミノ酸や食物繊維・ビタミン・ミネラルなど、体に必要な栄養素が豊富に含まれています。健全な食事に、お米は欠かせません。日本人が昔から食べてきたお米こそ、最高の主食なのです。
  しかし、お米は精製すると、栄養素が激減してしまいます。番組では、真っ白いお米の映像が流れていたのが、とても残念でした。精製度の低い茶色いお米に雑穀を混ぜれば、栄養的にも、味覚的にもぐんとレベルアップし、まさに “最強の主食 ・理想的な主食” になります。
 
   今回の番組は、ご飯を摂る量が減ってしまった現代人にとって、太古から受け継がれてきたお米の重要性を見直す良いきっかけになったのではないでしょうか。私たちはこれからも、お米に雑穀を加えたパワーのある主食を皆さんに摂っていただけるよう、働きかけていきたいと思っています。