NO.137
2018/08/22
 

先日、テレビ東京の番組 “未来世紀ジパング” で、最近の牛肉事情について取り上げていました。今、世界では年々牛肉の需要が高まり、各国で牛肉の争奪戦が繰り広げられているとのこと。日本企業もそれに参戦し、質の良い牛肉を求めてしのぎを削っている様子が報じられていました。
  そこで今回は近年の牛肉事情と、人間が伝統食を捨てて肉食という間違った食事に替えてしまった原因について少し述べてみたいと思います。

 


     
    日本は今、“熟成肉ブーム” に沸き、かつてない牛肉ブームが巻き起こっています。それに拍車をかけているのが、なんとシニア世代。ある焼き肉店では、客の3割を70才以上の高齢者が占めているというから、驚きです。以前、“肉食女子” という言葉が流行りましたが、今ではそうした人たちは “肉食シニア” と呼ばれています。
  日本で “牛肉” と言えば、脂がたっぷり入った霜降り牛が定番ですが、今では低脂肪の赤身肉に人気が集まっています。番組では、高齢者がせっせと牛肉を頬張っている映像が流れていました。その理由の一つに、健康情報番組があります。仕事がら私たちもそうした番組をよく見ますが、いまだに多くの医師や栄養士が健康長寿に肉食を勧めているのには、唖然としてしまいます。健康志向のシニアたちが 「元気で長生きしたい!」 と肉食に走るのも、無理はありません。間違った健康情報が “牛肉ブーム” に一役買っていることに、言葉を失ってしまいました。
 


     
  牛肉ブームは、日本だけではありません。世界の牛肉消費量は年々増加し、激しい牛肉争奪戦が繰り広げられています。それにともなって牛肉の価格も高騰し、日本では牛肉の小売価格が5年連続で上昇しています。
  牛肉価格の高騰の大きな原因の一つに、中国の “火鍋ブーム” があります。火鍋には牛のバラ肉が使われ、需要が拡大。中国では牛肉の輸入量が10年間で、なんと122倍に増加し、アメリカやオーストラリア・ニュージーランドなど、世界の牧草地を買いあさっては牛を育てているそうです。

  さらに今では、中国だけでなくマレーシアやインドネシアなどでも牛肉の消費量が著しく伸びています。以前は牛肉を食べていなかったアジアの人々が経済発展で豊かになり、牛肉を食べるようになったのがその理由です。
   


     
  中国と言うと、真っ先に“爆買”という言葉を思い浮かべる方が多いかと思いますが、ガンや心臓病・糖尿病といった 「現代成人病(生活習慣病)」 が急増していることもよく知られています。日本と同様、経済発展によって食の欧米化が急速に進んだことで、成人病の蔓延が深刻な問題になっています。  
  欧米食のような動物性食品中心の食事がさまざまな病気を引き起こしている事実は、多くの研究によって明らかになっています。なかでも、世界史上最大規模の疫学研究と言われているのが、“チャイナ・プロジェクト” です。アメリカ・コーネル大学の教授 “キャンベル博士” の指揮のもと、1983〜1988年にかけて中国全土と台湾から選ばれた1万6700人を対象に 「食と成人病の関係」 について調査研究が行われました。
  その結果、中国の田舎に住む貧しい人々はほぼ完璧な菜食主義の食生活を送っていて、そうした人たちには成人病が非常に少ないこと、それに対して中国の都市部に住む裕福な人々にだけ成人病が見られることが判明しました。この研究で、動物性タンパク質 (肉・牛乳・乳製品など) はどんなものでも健康に害をもたらすこと、人間にとって正しい食事とは「植物性食品中心の食事」であることが証明されました。すでに “動物タンパク神話”は、崩壊しているのです。

 
    とは言え、今後、貧しいアジアの国々が経済発展によって豊かになれば、それにつれて食の欧米化はますます拡大していくことになります。今は成人病が少ないそうした国々も将来には、日本や中国のようにアメリカの二の舞になることでしょう。  
     
  ではなぜ、経済的に豊かになるとそれまで続けてきた健康的な伝統食は崩壊してしまうのでしょうか。
世界の長寿村の研究で明らかになったのは   「人間に健康長寿をもたらす食事とは、質素な植物性食品中心の食事であること。そして長寿村であっても、欧米型の食生活に替わると短期間のうちに病気が多発し、短命化が始まるようになる」 ということです。
 それまでの植物性食品中心の食事が、パンと肉と油、砂糖たっぷりの食事に替わった途端、急激に病人が増えるようになり、かつての長寿村はあっという間に姿を消してしまったのです。こうした出来事は、食生活が健康長寿に大きく関係していることを明確に示しています。
   
  しかし見方を変えると、そうした長寿村の質素な食事は “貧困” という厳しい経済的理由から仕方なく選択してきた結果とも言えます。人間は誰もが 「幸福になりたい!」 と願っています。そして大半の人々は、幸福は物質的な豊かさの中にあると考えています。国が経済的に発展すると国民の生活が豊かになり、憧れていた先進諸国の人々のような贅沢な生活に手が届くようになります。ほとんどの人は、好きな物や贅沢な物を手に入れ、毎日おいしい食事をし、余暇を楽しみ、快適で便利な生活を送ることが幸福な人生であると思っています。
  貧しい時代には、ご馳走は特別な日やハレの日にだけ、普段は質素な食事を摂っていました。日常的に贅沢な食事を摂っていたのは、一部の金持ちだけなのです。肉 ・油 ・砂糖 ・乳製品からなる “欧米食” は、まさに貧しい人々が憧れていた贅沢な食事です。それは味覚の快楽をもたらし、人々の心に幸福感と満足感をもたらします。

  このように経済的に豊かになると、人々はそれまでの質素な伝統食を捨てて欧米食に飛びつき、成人病という新しい病気を招き入れることになります。成人病(生活習慣病)の蔓延の根本原因は、贅沢への憧れ、もっと豊かになりたいという人間の “心” の中にあるということです。戦後の日本や近年の中国を見ると、よく分かるのではないでしょうか。
 


     
  現在、物質文明の急激な発展と経済成長によって先進諸国の人々は、昔では考えられないような物質的富を手にすることになりました。多くの人間が心より物質・肉体を重視し、物質的刺激と肉体的快楽を常に求めています。そうした風潮が地球全体を覆い、それにともなって味覚の快楽を優先する間違った食事が広まり、先進諸国や裕福な人間の間で成人病が蔓延しています。
 
  かつての長寿村の理想的な食生活は、“貧困” という経済的事情がたまたまプラスに働いた結果としてもたらされたものでした。しかしこれからの人々には、経済的な豊かさの中にあっても、質素でシンプルな植物性食品中心の食生活を意識的に実践していくことが求められています。私たちは、人間にとって最も大切な“心の健全化”には、そうした「正しい食生活」が不可欠であると考えています。  


     


  死者225人以上という、あまりにも大きな被害をもたらした西日本豪雨から1カ月以上が経ちました。残暑の厳しい中、いまだ避難生活を強いられている多くの方々、後片付けに追われている皆様のご苦労を思うと、本当に胸が痛みます。被災された方々が、一日も早く安定した生活を取り戻すことができますよう、また暑さと疲労で体調を崩すことがありませんよう、スタッフ一同、心よりお祈り申し上げます。